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君想ふ夜桜《銀魂》

第5章 人は皆 十人十色



高杉が広間で顔をしかめたのは、足の痛みによるものだった。

最初は鈍痛で大したことはなかったが、結果悪化してしまった。

(その観察眼。“翡翠”とも呼ばれてるテメーは本当に鳥か何か?)

高杉は手当てを頼むことにした。


高杉は自分の着物の裾をまくり、雅は袖が邪魔にならないよう腕まくりし、優しく触れた。

(見たところ、腫れはない)

「痛い?」
「いや」

触れる位置を僅かにずらし、少し圧力をかける。痛むところを特定するのに必要な過程だ。

「…ッ」
「ここか」

棚から取り出したテープをある程度の長さに切った。

「そんなにかからないから。痛かったらすぐ教えて」

雅は慣れた手つきでテーピングを淡々とこなしていく。痛くないよう優しく丁寧に。

そのおかげで全く痛くなかった。

(昔、銀時にやってもらった時と明らかに違ェ…)

いつもの無愛想なコイツとは一変して、思いやりのある手だ…

医療に関しては本当に優秀だな

それに、手当てを2人きりでやってもらうことは、久方振りな気がする

いつもは、戦後の重軽傷者の人混みの中でやってもらってたからな

そういや、コイツに初めて会ったのも、道場破りで手当してもらった時だったな

(コイツの手、よく見たら小せェな)

テーピングをしている雅の手を見て、何となく思った。

雅は元々華奢な方だから手も小せェ。本人に言ったら、睨まれるが…

だが、女らしい綺麗な手だな
      ・・・・・・
他の連中も、そういうのを楽しみにしてるのは違いねェが

男は誰だって、女に優しくしてもらいたいと思う。中には雅自身を狙うやからも多い。辰馬とかな…

女ってのァ苦労するな。特にこんな男ばっかのむさ苦しい場所じゃあ

だが、今更思うな

こんな小さな手が、今まで 味方の腹かっさばいて救ってわ、敵を斬って守ってきたのか


「……すまねェな」

「!」

「いろいろ苦労かけて」

「…いや、謝るのは私の方だ」

目も合わせず、テーピングを続けた。

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