第19章 友が為
「挟み撃ちか。これじゃ両面焼きのハムエッグよ」
「それ違う作品のセリフ。こんな時に他人になりきるな」
このまま蠱毒の呪術を両側から一斉放射されたら一溜まりもない。
その予想に応えるように、敵は呪札を放つために手を構えてきた。
「……銀。敵に向かってお辞儀できる?」
「何だ藪から棒に。「ばい菌ばっちいのでやめてください」とでもお願いする気か?」
「いやそうじゃない。ちょっと背中を借りたい」
「背中?」
「できればマットレスのような柔らかさが欲しかったが、同じ白色だから、まあ良しとする」
「意味が分かんねーよ。妥協点ズレてねーか?」
ちょっと待て、マットレス?背中を借りたい?じゃあコイツ……
「白夜叉。青い死神。お前達はここで消えろ」
敵の蠱毒が放たれそうになる切羽詰まった中、銀時は背中を丸め込んだ。
雅の言う通りの体勢になった。
(!。何…?!)
敵は目を見開いた。
青い死神が白夜叉の背中で後転し、勢いで宙に舞った。
そして魘魅の部下の背後へ着地し、瞬間背中を狙った。
一瞬の出来事かつ予想だにしない動きで、1人倒された。
(挟み撃ちにされたなら、どちらかが端っこに行けばチャラだ)
男より身軽な私だからこそできる芸当だ。普通なら考えつかないだろう。
雅は振り向いて、魘魅と睨み合う。銀時と共に挟み撃ちにした。
形勢逆転だ。
「…なるほど。白夜叉や鬼兵隊ばかりを警戒していたが……貴様ほどの兵がいたとはな…女よ」
「私が欲しいのは“称賛”ではなく“情報”だ。お前達が扱う秘術“蠱毒”というのは、本当に解毒不可能なのか?」
雅は一切警戒心を緩めず、慎重に相手に問いただす。
銀時に「まだ倒しにかかるな」と目で伝えた。聞きたいことがあるから。
「……それは…貴様が一番知っているはずだ。蠱毒を広めてから…もう随分経つ。もし手を打っていたら、すでに…事態に回復の兆しがあるはず…」
敵の言う通りで返す言葉が見つからない。
もし地球内で発生した疫病なら、何とか抑え込むことができたかもしれない。
私はせんせーと今まで、疫病で崩壊寸前まで追いつめられたいくつもの集落へ行き、実際見てきた。