第19章 友が為
薄暗い戦艦の中で、一筋の光が射し込んでいる。2人で上を見上げた。
上の方に二つの影が確かに見える。編み笠をつけ全身包帯で巻いてある不気味な奴。
“魘魅”で間違い無い。
銀時は階段を指差して、雅は頷いた。
「銀。私は絶対アンタを死せない。そのために私は絶対ここでは死なない」
「……ああ。お互いにな」
銀時が先頭で階段を登る。雅は左手の刀を握り締めた。
(戦を終わらせ、松陽を奪還する。
・・・
銀達の帰る場所を取り戻す)
そして私は、自分の帰るべき場所を……
ドガァンッ!
『!』
階段の先で大きな音がし、金属が軋む音がした。
上の方で敵が階段を壊した。
それに気付いた銀時が雅の腕を即座に掴み、横の方へ飛び移った。
上の階の壊れた床にしがみついた。
「銀時ッ!」
「やってくれたな上の奴ら。こんな手荒いやり方で下へ圧力をかけるとは。ブラック企業かここは」
ぶら下がった状態で、銀時は呑気なことを言いながら、雅の腕を離さない。
(雅が少食で助かったぜ。男二人だったら今頃落ちてたぜ)
上から足音が聞こえる。敵の奴らが勝機を逃さないよう、急いで下に降りてくるんだ。
「雅。勢い付けるから向こうの方に飛べ」
「分かった」
銀時が雅を下の階へ放り投げ、雅は着地から一回転して衝撃を緩和した。
「銀も早く降り……」
しかし、魘魅がぶら下がっている銀時の真上にすでにいて、武器を振りかざしていた。
「銀ッ!」
雅は手元の小太刀を抜き、魘魅に向けて投げた。
それは敵の武器と相殺して、僅かに敵の隙を作った。
そこに銀時が刀で攻撃し、魘魅は後ろへふらつき、銀時は床に乗ることができた。
しかし2人は離れ離れになり、雅の背後からはもう1人の敵が現れた。
白い装束に白い布で顔を覆っている不気味な奴。魘魅の手下だ。
「“青い死神”」
不気味な声を出した。
「ああ。死神だよ。アンタをさらに下の地獄へ引きずり下ろすためのな」
雅は妖刀“新月”を敵に向けた。