第19章 友が為
藪から棒に言われ、雅は間抜けそうな声を出した。
銀時は戦艦の錆びた入り口を強く叩いて、中へと入り、雅も後を追う。
電気の配線はとっくに切れているため、明かりは外の光のみ。
足元に注意しなければ。
「お前はこの戦で背負い込みすぎてきた。だから、全て終わったら、もう背負う必要はねーだろうさ」
銀時は背を向けたまま、はっきりと後ろの雅に向けて言った。
銀時は長期に渡る戦いの最中で、思うところがあった。
周りの隊士の風紀のことだ。
多くの兵士は体も心が限界に近く、しかも今は謎の伝染病が流行っている始末。
故郷の人達に懐かしい郷土料理の味に飢えて、人としての理性や精神を失いかけている物達がいる。
軍に属するものとして最低限のモラルを守らない者が増えている。
明日死ぬかもしれない不安や恐怖など、色々とため込んでいる。
銀時はそんな不安の声を漏らす隊士達の話を小耳に挟むことがあった。
そして以前、最悪な光景を目にしたことがあった。
溜まっていたことで我慢しきれず、ヤっているのを見てしまったのだ。男同士で。
(ありゃ最悪な絵面だったな。ヅラも唖然としていたぜ……)
雅があの場にいなかったので、心底ホッとした。
最悪な場合。アイツが野郎共にとって、格好のはけ口になるかもしんねェ…
ゲロ袋にされるかもしれねェ…
(雅を、こんな獣だらけの場所にいさせるのは、酷ってモンだろう。普通は…)
俺は知っている。コイツは“てめー”(自分)のことに関しては、全く意に介さねェ。
自分のことを赤の他人のように思って、怪我を負った奴らをまるで自分のことのように一生懸命になる。
昔は周りの奴らに意を介さなかった奴が、随分と成長したじゃねーか。結構なことだ。
だが、助けた奴らからの厚意を全く受け取らねェ。それじゃあ、あいこにならねーぜ。
(俺ァな、
・・・・・・・・
ホッとしたんだぜ。てめーが普通の人間のような心をちゃんと持っていることを)
愛することができる相手が、身近にいることがな。
高杉はともかく、お前の幸せくれーは願うさ。これでも俺は、お前とは長い付き合いだからな。