第5章 人は皆 十人十色
(起きてたのか…)
煙管をたしなむその横顔は、いつもと変わらねェ表情だ
アイツの考えてることは俺でもよく分かんねェ
(だが、何でだろうな)
昔からそうだ。アイツの横顔が寂しそうに見える…
「こんなとこで何してるの?」
!!
ガバッと振り向くと、雅が後ろにいた。
「お、お前…!」
部屋を見たら誰もいない。
(今さっき部屋にいただろ。出口はずっと俺が立ってたから出られないはずだ。どうやって部屋から出た!)
驚きすぎて声も出なかった。
「こんな所に来るなんて、ビックリしたよ」
(いやビックリしたのはこっちだ)
ほんの一瞬目を離した隙に何があった?
「ば、バカな!時を…止めただと…?!」
「いやそれアンタ。何自分の声優ネタ使ってんだ?」
どっかの闇の帝王じゃあるまいし。誰かの奇妙な冒険のDI○ですか?カリスマ性があるのは共通点だが…
つまらない話は置いといて、
「何故ここにいる?広間で皆と飲んでたんじゃないの?」
どうやら彼女は、自分が瞬間移動するのが当たり前のようだ。
(何だったんだ…)
「い、いや 外の空気を吸いたくてな。そこで音がして」
「音?」
しかしあの音。どっかで聞いたことがあるような…だが小さかったし、どうも思い出せねェ
「……やっぱり何でもねェ。じゃあな」
広間に戻ろうとしたら、
「待て」
「!」
雅が止めて、俺の目の前に来た
そして俺の方をじっと見て、何か考えるようなそぶりを見せた
「?」
「ちょっと部屋に来て」
「!」
〈雅の部屋〉
「腰かけて待ってろ」と言われ、俺は畳の上に座っていた。
雅は棚から色々と取り出していた。
(まさか雅の部屋に入るとは…)
辺りを見渡しても、前も見た通り、家具も少ない上に特に着飾ってもなく物静かな部屋だ。
(会話だけじゃなく、部屋も最小限か…)
雅は高杉のそばにしゃがんだ。
「足見せて」
「!」
「ケガしてるのは分かってる」
「……気付いてたのか」
雅は高杉が広間に戻ろうと歩く後ろ姿を見て、違和感を感じたのだ。
(いつもと歩き方が違う…)
何人も治療してきた雅は、その経験と元々ある並外れた勘ですぐ分かった。