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君想ふ夜桜《銀魂》

第19章 友が為



現在


雅の手柄で、“蠱毒”とそれを操る“魘魅”の存在が発覚した。

それを桂が説明し、隊士達全員は驚きのあまりしばらく声を出せなかった。

今まで手強い敵相手でも、白夜叉、狂乱の貴公子、鬼兵隊総督、声のデカい人、青い死神など、頼もしい味方がいたからこそ、ここまで長く戦ってこれた。

しかし今回は状況が違う。

相手は星一つをも破壊しうる兵器。それも実体はなく、ウィルスとしてバラまかれている。

次々に体調不良者が出て、重傷者も増えている中、今度かかるのは自分かもしれないと、そう怯えて夜も眠れない隊士も、決して少なくなかった。


そんな中雅は数日に渡って、たった1人で死体の解剖に尽力を注いだ。

仲間の体が切り裂かれ内臓を取り出される姿を見れるほど肝が据わった者は中々いない。

ただ、桂や高杉など手伝いの志願者はいたが、やはり酷すぎるから止めた方がいいと、丁重にお断りした。

そして検視結果で、血液濃度の数値が異常で、あらゆる器官も正常を失っていることが分かった。

彼女でさえ今まで見たことのない結果で、思わずカルテを手から滑り落としそうなほどだった。

(まさか…こんなことが……)

しかし動揺の顔を浮かべるのは、1人で研究室か自分の部屋にいるときだけと決めている。

表に出て桂や他の仲間に報告する時は、いつもの医者の顔でいる。

人の命を救う立場であるなら、人であることを止めるくらいの覚悟でいる必要がある。

だから死神でいられるのは、本懐だ。

ただ、そんな彼女を心配そうに遠くから見つめる者がいた。

高杉以上に、彼女と長い付き合いである男。


数日後、雅は久しぶりに戦場に立った。

数日間の検死を経て、情報を分析しつつ、敵の呪術とやらをこの目で見るために自ら出陣した。

戦場を見渡して、それらしき敵がいないか探す。

(ヅラがこの数日間、奴らの消息を追ってくれた。奴らに直接会えば、きっと何かが…)

「おい。大丈夫か?」

銀時が後ろから声をかけた。

「何に対してだ?」

「仲間が変死して以来、ずっと仕事づくめだろう?チョコでも食うか?」

懐から板チョコを取り出した。カカオ40%のちゃんと甘いやつだった。
 
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