第18章 帰ったらまず、手を洗おう
「雅!!」
皆と拠点へ帰った桂が気になって彼女の元に戻ってきた。
そこで目にしたのは、彼女の足元に寝転がっている死体だ。
「これはどういうことだ?なぜこんな……」
「……昼の戦いで敵にデマを流して、待ち伏せしていた。脅して情報を聞き出し殺した」
正直に自分がしたことを話した。
「貴様…こんなこと、武士がする行いではないぞ!」
桂にとっての武士の戦いとは、日中に正々堂々とやるものだ。
夜中に背後から不意打ちを狙うのは、卑怯者がやる手段だ。
そしてそれをやったのが、よりにもよって仲間の雅だなんて。
桂は複雑な気持ちになった。
「こんなマネ。銀時や高杉でもやらないぞ。それをお前は…」
「今更、私が冷酷の“青い死神”と呼ばれる理由が分かったか?」
死神。その言葉を聞く度に、桂は思い出す。
松下村塾にいた頃、祭りの夜で起きたあの事件で、真っ赤に汚れた雅の姿を。
そして人間味を感じさせない彼女の表情。今まさにその時の姿が重ね合わさって見えてしまう。
(雅……)
あの後、俺は先生に頼まれた。
『あの子がこの先また、自分に刃を突き立てるようなことがあったら、助けてあげてください』
俺は将として、皆を率いる使命がある。そして友を助ける。
俺は人を救いへと導く雅が、そのような手段で手を汚すことに耐えれない。
そもそも、俺は雅がこの戦場にいることは、決して正しいものではないと今でも思う。
俺達は国のために今まで手を汚してきた。それが正しい道だと信じて。
だが、お前まで手を汚す必要はないだろう。
女であるお前には、もっと別の道があったかもしれない。
たとえ志が同じでも、俺達とお前は立場が違う。お前はこの先の国の未来のためにも、決して死んではならない。
「…俺はお前がこれ以上、自分を陥れるようなマネをするのは……見たくない」