第18章 帰ったらまず、手を洗おう
「分かった。他の隊士達のことは俺に任せろ」
「任せた。あと、ちゃんと手を洗っておくようにも言っておいて。あとうがいも」
桂が引き連れる隊士達の中には、すすり泣きをする人が見えた。
亡くなった隊士と親しき間柄の者だろうかと、雅はそう思いながら皆の背中を見送った。
中には、彼女を睨みつけながら進む隊士もいた。
亡くなった友に何の感情も揺らず、淡々と話をした姿が癪に障ったのだろうと、雅自身は思った。
(あの目にはもう慣れた……)
雅はさっき自分達が休憩していた場所へ戻った。
人1人が乗れるほどの大岩のそばに来て、足元から力が抜けるようにして、片腕で寄りかかる。
「こういう時、お前はいつも独りになるのか?」
「!」
高杉が後ろにいて、雅は不意をつかれた。
「アンタ……何で皆と行かないの?」
「てめーこそ何で残る必要がある?」
「……場所に原因があるかもしれないと思ったからだ。可能性も徹底的に洗わなきゃいけない」
「ここは俺達がいた場所だろ」
「……」
言い返せず、違う話を出した。
「まあ丁度良かった。アンタに話がある」
「話だと?」
雅は振り向くことなく背中を見せたまま高杉に話しかける。
「あの男の遺体。私に譲ってくれないか?」
「!」
亡くなった隊士は鬼兵隊の1人で、高杉の部下である。
彼女はそれを知っててたのみこんだ。司法解剖に必要だからと。
幸い、あの男に身内はいないから、リーダーである高杉に許可を取れば心置きなく原因を突き止められる。
「今回の死因を特定しなければいけないんだ。なるべくきれいな状態に戻して帰すさ。頼む」
「……そりゃ別に構わねェ。だが、頼むなら顔くれェ合わせたらどうだ?」
「……」