第18章 帰ったらまず、手を洗おう
「おーいいじゃないか!なんならわしがやろうか!」
・・・・・
「お前の場合身長が高ェから、脚長くて雅の後頭部のサイズにゃ合わねーよ」
「おいどういうことだ?」
高杉は怖い顔をして銀時に詰め寄った。
雅は寝付きがとてもよく、スースー小さな寝息を立てていた。
戦で使う白い鉢巻をアイマスク代わりにしている。
「どっちみち、雅が他の隊士の寝込みを襲われねーよう、そばで見張ってなきゃいけねーからな。それを膝枕にするだけだろ」
「だからって何で俺に言うんだ?」
高杉は銀時がいつものように自分のことをからかっているんだと思っていた。
しかし、今回の銀時はひと味違う。彼女への思いやりを込めていた。
(好きな奴の膝で眠れるんだ。少しはいい夢でも見れるだろうぜ)
「なんだよ高杉。ビビってんのか?女の子の膝枕もできねーくらいウブなのか。そういやあの遊郭でも…」
ブチッ
「てめーよりはうまくやらァ」
膝枕のマウント合戦だ。
高杉は岩から降りて、彼女のそばに寄る。ゆっくり近付くにつれて、心臓の鼓動が速くなってきた。
(お、落ち着け。ここでミスればメンツが立たなくなる)
『あーあ雅起きちまったじゃねーか』
『やってしまったな高杉』
『女の子を起こすとはやってしまったのう高杉』
『え?アンタ何してんの?』
(雅の寝起きで怒った表情が予想できらァ)
高杉はようやく雅の頭にピトッと自分の膝をつけた。
ゆっくりと彼女の頭を上げて自分の膝に滑らせるように乗せた。
(普通逆ではないのか?)
桂は思った。膝枕は女が男にするお楽しみのイベントではないのかと。
スースー
寝息は途絶えていない。雅を起こさずにできた。
高杉はホッとして、後ろの岩に寄っかかった。
(コイツに膝枕なんて初めてしたな…)
寝ているが、まるで甘えられているような気がして、悪い気分ではなかった。
雅の白い鉢巻が目元から滑り落ちて、横の寝顔を拝めるようになった。
(……寝てりゃ子供みてーなのにな)
高杉は雅の髪の毛にそっと触れた。
自然と笑みがこぼれた。