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君想ふ夜桜《銀魂》

第18章 帰ったらまず、手を洗おう



「……私は誰かの言いなりになるのは嫌だよ。晋助の言い分と似たようなモンだ」

「そうかー。公務員より起業家を目指すのか」

「誰がそんなこと言った。ていうかアンタいつもそんな現代風な例え好きだな」

高杉はこの時、雅に同調されたような気がして、じわじわと嬉しくなった。

さっきまでの口論のギスギスがあっさり消えた。

好きな人に言われると、その価値が随分と高くなってしまい、胸も高鳴ってしまう。

「おまんのその医術なら、国をひっくり返すくらいの力があると思うがのう」

「……褒め言葉ありがとう」

バカ丸出しの坂本が時折見せる“その察しの良さ”に、雅はちょっとした恐怖心を覚えた。


『国をひっくり返すほどの物だ。絶対誰にも教えるな』

・・・・・・・
全く同じ言葉を華岡愁青に言われたことがある。

師匠の言葉の面影を感じてしまい、下手したら感涙に咽ぶ。

(……余計なことを考えるな。あの人は、もう帰ってこないんだ)

そう自分に言い聞かせ、今度こそ眠りにつこうとした。

「……なあ雅。俺からも聞いて良いか?できれば明日より今がいいんだが」

「?」

雅は重い体を起こした。

「お前以外にその医術を教わった弟子はいないのか?」

「!」

高杉ははっとした。何で今までそのことに疑問を抱かなかったのかと。

「……いないはずだ。私が唯一無二の弟子だと、本人は言ってたからな」

「本人?お前の先生のことか?」

雅は軽く頷いた。

「ではお前の医術は、お前以外にその先生しか考えられないというわけか」

「……そうなるね」

しかし彼女には、
・・・・・・・・・・・
引っかかることがあった。

幕府軍の医療のことだ。

治療に不可欠な麻酔薬を、向こうも使っているのは、向こうの隊士の回復スピードから見て間違いない。

だが、華岡愁青と自分しか製造法の知らない麻酔薬の情報が、なぜ向こうに漏れたのか?

(10年前、奈落は幼い私を利用して、華岡青愁から麻酔薬の製造法を奪おうとした。けどせんせーが全て返り討ちにした)

それから間もなく、せんせーは私の前から姿を消した。

私と母さんを魔の手から護るために。

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