第18章 帰ったらまず、手を洗おう
「国を想い戦っていようと、国に徒なす者は皆「賊軍」と呼ばれる。天人どもを退け、幕府を転覆させ、新しき国をうち建てねば、「官軍」にはなれんぞ」
桂は攘夷四天王の中でもリーダー格の持ち主。この先のことをよく考えていた。
「何その無理ゲー。まだ魔王バラモスに転職する方がまだ楽そうだよ」
「安心せい銀時。遊び人は悟りの書がなくてもレベル20で官軍になれるぜよ」
「それ賢者」
ツッコミポジションに入る銀時。
雅はその後ろ雑談に聞く耳を持たず、ずっと地面を見下ろして書き書きしていた。
もう夜だから焚き火を灯りにして、目を凝らして何とか書く。
自分が思い当たる風邪のウィルスの化学式を片っ端から書いて、頭の中でずっと整理していた。
あらゆる可能性を模索してみても、やはり当てはまりそうな物が何一つない。
なら、
・・・・・・・・・・・・
直接向こうに聞くしかない。もう“仕込み”は済んでいる。
「官軍なんてのは、国の言いなりのバカにつけられる仇名だろ」
ピタッ
高杉の声が混じると、無意識に反応して作業の手を止めた。
耳を澄ませた。
「それとも何か。この中に国のため民のために戦うなんて殊勝な奴がいたか」
「バカヤロー。攘夷戦争の半分は優しさでできてんだよ。確かに一番ではない。でもモテたい。八つ当たりしたいの次くらいに国を想う気持ちはあるよ」
「攘夷戦争ほぼガラクタでできてんだろうが」
高杉は銀時をツッコんだ。
(銀は相変わらずだな…)
「まあでも、これくらいの年の男の子なら、これが普通の会話か」と雅は年上のお姉さんチックな発想をした。
実際彼女は、銀時、高杉、桂より2~3歳ほど年上の20歳であるのが設定である。
身長は155cmと小柄であるが、一応大人である。
「何と呼ばれようが構やしねェだろ。誰にも理解されなくても」
(!)
「俺達のやろうとしている事は、俺達がしっている。それで充分じゃねェか」
(……)
雅は四人から見えない死角で、下を向いて唇を噛んだ。