第18章 帰ったらまず、手を洗おう
物語が始まってすぐの12P目から、すでに……
雅は相変わらずまるで他人事のようにしれっとしている。
恋する乙女のようなフワフワしたオーラも情熱的なオーラも何も兼ね備えちゃいない。
(コイツ、顔はめんこいのにマジで愛想ねーからな。正直もったいねェって思うぜ)
そんな愛想ゼロの彼女は口を開く。
「……アイツは私と同じはずだ。戦に勝つことだけを考えている。だから今のアイツに、
・・・・・・・・・
そんなもの必要ない」
私はこんな形骸化した感情をアイツに教える気もない。
昔の密かな想いもその過去も、アイツに思い出させる気なんかない。
この戦にいる高杉晋助は、松陽を救うため剣を振るう。ただそれだけじゃないか。
それ以外は必要ないだろう。
「アンタもよく分かるだろう。なぜなら…」
ハッ
「松陽を誰よりも救いたいと思っているアンタなら、その理由が分かるだろう」と言おうとしたが、銀時の心の傷口をほじくり返しそうで、口を寸止めした。
銀時がほじるのは鼻くそだけで十分だ。
「まあ、アンタとは昔からの腐れ縁だしな。世話になったこともあるから、私の秘密を一つ教えておいた」
“本当の秘密”は、教えないけどな…
「せいぜい他言しないように」
「……そーだな。こんな場所じゃ、仕事とプライベート別なんてできやねーしな」
バイト内で付き合っても、仕事に集中できない。それと同じだ。
だが…
銀時は雅に微笑みかけた。
・・
(今は必要ない。だが
・・
未来になら必要になるんじゃねーか?雅…)
そんなジグゾーパズルみてーに、難しいもんじゃねーだろ。“愛する”ってのは。
「おい。何してんだこんなところで?」
銀時と雅の背後に高杉が姿を現した。