第18章 帰ったらまず、手を洗おう
ここは戦場。
その身体と頭脳を最大限に活かし、どんな手段を使おうとも勝利を掴む。
そんな奴が生き残る場所だ。浮かれる奴は死ぬ。
私は軍医として、皆の命を救い護る義務がある。
だから生き残らなくてはいけない。
自分の命は惜しくないが、与えられた使命のために、くたばるわけにはいかない。
「私がアイツに好意を抱いていることは認めるよ。だけどそれを行動で示す気はないよ」
「……戦に私情は必要ねェから、か?」
雅は黙りを決め込み、無言のYESと答えた。
(実にてめーらしいシビアな発想だな)
全く愛想のねェ奴だなと、銀時は呟く。
真顔で「アイツが好き」なんて言われても、全く実感がわかない。
・
むしろ逆だと思っていた。
(俺ャてっきり、高杉の方が雅に好意を持ってるかと思ってたぜ…)
高杉の雅に対する態度を見ても、完全に脈アリだもんな。
アイツ絡みだと動揺するわ、俺や他の仲間が雅の名前言うだけですぐに反応するわ。
何より、俺にアイツのことをよく聞くからな。
「雅はお前の次に、松下村塾に入門したから、お前が一番付き合い長ェだろ。だから教えろ」って
そん時のアイツの目は、いっつも真面目なんだよな。
発情期みてーだったな。
(相思相愛。アイツがこの事実を知ったら、こりゃまあ……)
銀時は思わずフッと笑みをこぼした。
「つくづくお堅い奴なんだな。普通好きなら男女関係なく動揺するモンなのに、お前はそんなこと…」
恋心は普通、抑えきれないほど膨れ上がるもんだろ。
本当に好きなのか?それか俺をからかうための嘘か?でもコイツは意外と嘘をつかない性分だが。
銀時は首を傾げて雅の無表情をジロジロ眺める。
「…私はアイツを特別扱いする気はないからな。それにこれが“最善”だからだ」
この戦において最善のこと。
それは、戦に必要な想い以外の余計なものを排除することだ。
「半年前だったか。アンタにも言ったな。私がここにいるのはそんなものじゃないと」
「!」
銀時は思い出した。
・・・・・
『私は、そんなもののために“ここ”(戦場)にいるわけじゃない』
「…まさか、お前……」
あの言葉の意味。
・・・ ・・・
あん時、すでにアイツのことを……