第18章 帰ったらまず、手を洗おう
「そりゃつまりあれか?お前でも手に負えないくらいの、ヤバいことなのか?」
「ああ」
「10段階でどれくらいだ?」
「20」
即答するくらいやばい案件だと物語っていた。
「アンタの想像以上…いや、“私”(本職)の想像以上だ。ただの風邪じゃないかもしれない」
「風邪じゃない?じゃあ何だっていうんだ?」
「……未知のウィルス。天人が持ち込んだ治療不可能のものである可能性がある」
「未知のウィルスだと?」
ここ数週間、体調不良を訴える隊士が増えている。
軍内感染を恐れて、本拠地とは別の小さな離れで治療にあたっているが、治った人は1人もいない。
むしろ、重症化している人がほとんどだ。髪が白くなって、呼吸器官にも影響を及ぼす。
見たことない症例だ。地球で自然にできたものとは考えられない。
天人が作った人工的なウィルス。ナノマシンの可能性が高い。
「つまり、元凶を突き止めなきゃ、俺たちは病気で全滅するかもしれねェってわけか?」
「そうだ。ウィルスからワクチンを作ろうにも、それがどこの何のブツなのかが分からなければ……」
雅の顔は曇るばかりである。
「……確かに参ったな。天人や幕府軍にやられるんじゃなく、病魔にやられちゃァな」
銀時は自身の白髪をモサモサとかいた。
「……一応確認しておくが、体調はどうなんだ?」
「俺は見ての通り昔ながらの白天パだ。体調も万全だ」
「そうか。ならいい…」
雅は、引き締まった堅苦しい顔から、ほっと一息ついて安心した表情に変わった。
今、銀時と雅は一緒にいるが、この後二手に分かれて天人を挟み撃ちのような形で一気に追い込む。
その作戦をもうすぐで実行する。
「今日の戦を終えたら、ちゃんと手を洗っておくように」
「おお。おっ死なねェよう気ィ付けるよ。死んだら手洗えなくなるからな」
「銀はあとで鬼兵隊と落ち合うらしいな。その時ちゃんと晋助含めて皆に、手を洗うように言っておいて」
「今日お前まるでおかんだな」
「おかんでいいから、ちゃんと伝えておいて」
「へいへい。結構念を押すな。アイツがそんなに心配か?そんなにアイツのことが好きか?」
「そうだな」
「やっぱりそうか………え?」