第18章 帰ったらまず、手を洗おう
荒れ地と化している戦場。
地雷、手投げ弾、戦艦などの大きな爆発で、地形は大きく変わっていた。
草木などどこにもなく、人為的に作られた地面の窪み。塹壕だ。
さらに遠くに目を凝らすと、豆粒が一列に並んでいる。敵だ。
そんな風景を雅は見渡していた。
(ここも随分と変わってしまったな…)
戦が始まって、季節を2つくらいは跨いだか。
肌寒い秋から極寒の冬になるのも、そんな遠くないだろう。
何か固い棒を踏んだ感触があり、雅は下を見た。
カラッカラに乾燥した死体の腕だ。
人間の物とは違う形だ。天人の物か。
「……寒いな」
「ああ。確かに寒ィな」
銀時がモサモサ頭を片手でわしゃわしゃ掻きながら、雅の隣に現れた。
「…アンタの頭は雪のように白いから、見てるだけで寒くなるな」
「ハッ。雪か。その方がよっぽど可愛らしい喩えじゃねェか。昔、どっかの誰かさんに「綿あめと区別が付かん」とは言われたけどな」
(まだ根に持っているのかこのお喋り綿あめは)