第18章 帰ったらまず、手を洗おう
『そうじゃな…じゃが、アイツを見て「本当に人か?」と疑ったことはあるがな』
ピクッ
『おい。それァどういうことだ?』
『今の会話で思い出したんじゃ。アイツに初めて会った、商人のワシに医療物品を頼んできた時もそうじゃった。
商いで色んな者を見てきたワシからすると、アイツは並外れてるというか、まるで人じゃなく…』
ガッ!
高杉は坂本の襟元を掴んだ。
『高杉…!』
『てめェ…まさかそれを“アイツ”(本人)に言ったんじゃねーだろうな…?!』
大掃除の朝の日。高杉はあの時、坂本の言葉をいつものような戯れ事だと受け止めて、突っかかった。
わしが陰口を言ったと思って、雅の心を傷つけるようなことを許せなかったんじゃろう。
だが、わしゃ決して
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そういうつもりじゃなかったぜよ。
雅を傷つけるつもりではなかった。
今思えば、
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その本質を他の誰かと共有したかったんじゃ。
雅は明らかに普通の人じゃない。
その異質は、
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いつか自分の身を滅ぼすかもしれん。そう他の誰かに言いたかったんじゃ。
辰馬はいつものような陽気な雰囲気をストップさせ、雅を心配そうな目でじっと見つめた。
「……もう私は行くが、その顔、まだ何か言いたそうだな?」
「……雅。おまんはもう少し、自分に優しくなるべきじゃないのか?厳しいのは結構じゃが、今のおまんを見てると、わしゃ心配じゃ」
「……」
自分に優しくなれ?フッ。愚問だな。
雅の心は辰馬の言葉をあざ笑った。
坂本。アンタ知らないと思うが、昔の私はな、
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醜いくらい優しかったんだ。