第18章 帰ったらまず、手を洗おう
「どーしたんじゃ雅?高杉においてかれたのか?」
「…いや、急にこんなものを渡して去っていった。お手洗いでも催したのか?」
小さな包みを破かないよう丁寧に解き、中の物を取りだした。
「髪飾り?」
桜の花びらの綺麗な装飾品だ。血みどろの戦場に似合わないほどの上等な品。
(高そうなものだな。今の私、髪短いのに、何でこれを…)
理由を聞きたかったが、高杉はどこかに行ってしまった。
「ああそれか!贈り物っちゅーのは」
「贈り物?」
坂本は手の平にぽんと拳を置いた。
「高杉がおまんに日々の感謝の意を込めて、何かいい品はないかと探してたんじゃ。そうじゃそうじゃ」
実際は、4人でお金を出し合って贈ろうというのが、昨日決めたことだったが、坂本は予定変更した。
高杉のみの手柄にすることで、雅からの好感度を上げようというのだ。
しかし、当の本人は、いきなり上等な品を渡されて困惑していた。
菓子を差し入れを貰う経験はあっても、高価な物を貰ったことはない。
「日々の感謝なんて。私はただ当然をしているだけで、私は高杉に助けられたこともあるんだが……何だか受け取りにくいな」
「そんなこと言うもんじゃないぜよ。考えてみろ。高杉は個人で贈り物を渡すたまか?」
「……違うな。アイツらしくない」
「そうだろう?それくらい真剣と見受けられるぜよ。こういう好意は受け取っておけ。それにわしが察するに、おまんがこの先の戦で勝てるようにする願掛けじゃろう」
願掛け?
「この戦が終わった頃にはおまんの髪も今より伸びとるじゃろう。だから「必ず生き残れ」と、そういうことじゃないか?直接言わず贈り物で伝えるとは、アイツらしく不器用ぜよ」
雅は坂本の言葉が印象に残った。そして腑に落ちた。
……そうだな。私はこの戦に勝つまで死ぬわけにはいかない。
なるほど。そういう願掛けもありかもしれないな。
「……じゃ、ありがたく受け取っておこう。もし晋助に会うことがあったら「ありがとう」って言っておいてくれ」
何でおまんも直接言わん?わしは伝書鳩か?それともハリーポッターか?