第16章 愛しさと切なさは紙一重
「……もし本当に“死神”だったら、晋助様も、今よりは苦しまずに……」
また子は高杉の心配をして、苦い表情になり俯いた。
高杉が殺された師匠の敵討ちのために、今戦っていることを知っている。
ただ、もしその“青い死神”が生きていて、高杉のそばにいれば、高杉はまだ“幸福”を得ることができたはず。
国を討つ気持ちが、今と分からなくても、大事な人がいるのといないのとでは、全然違う。
きっと高杉は、自分を壊すよりも、その大事な人を護りたいと願うはず。
「生きたい」と願うはず。
「そうだな。もし“青い死神”が生き返れば、アイツも違う道を選んでいたかもしれぬな。無理な話でござるが。だがこうとも捉えられる」
「?」
また子は耳をすませた。
「晋助の話が本当なら、拙者達はここに集うことが無かったのかもしれない」
「!」
高杉は“青い死神”に命を救われた。
ならもしそうでなければ、鬼兵隊は生まれることはなかったはず。
きっと違う未来になっていたはず。
「鬼兵隊が生まれたのは、また子。お前がきっかけでもあったが、晋助を助けたその者のおかげだと拙者は思う」
「……そうっスね」
なら私も、晋助様を助けてくださったそのお方にお礼を言うのが筋ってものなんスかね?
もし、地球のどこかに、その人の墓があるとすれば、手を合わせに行きたい気もするっス。
でも、晋助様に聞けるわけがないな。
私にとって晋助様は、命の恩人であり、暗闇の中に差し込んだ“希望の光”みたいな方だから。
きっと、この船にいる鬼兵隊全員も、そう思ってあの方について行ってるんスね。
実際、この鬼兵隊にいる人全員は、幕府を倒すという晋助様の信念や理想に惹かれて、ここにいる。
幕府に身も心もボロボロにされ、行き着く先は地獄。
天人に国を支配されるなんて間違っている。今の幕府はおかしい。国を護るために、今の幕府を討とう。
ただ国を想ってやってきたことを、逆に幕府によって完膚なきまでに討たれた。
逃げても逃げても、攘夷志士狩りで、多くの仲間が捕らえられて、屈辱的な死を迎えた。