第16章 愛しさと切なさは紙一重
「あ!あの!」
『!』
女の子は勇気を振り絞って、命の恩人であるお姉さんに声をかける。
まだ腰が抜けていて立ち上がれないが、何とか腕を伸ばして、持っている綿菓子を向ける。
「た、助けてくれて…ありがとう……これよかったら…」
「……じゃいただく」
雅は綿菓子をひとつまみちぎって、お礼を受け取った。
女の子は全部あげるつもりでいたが、お姉さんはそうしなかった。
子供が親に買ってもらったものを全部もらうなんて、そんなことはできないから。
師匠にいつもお茶菓子をねだって買ってもらった思い出もあったため、その思い出を邪魔するようなことはできなかった。
ただ、お礼はちゃんと受け取るのも礼儀だから、一口サイズを貰って、口にポンと入れた。
神輿の事故騒ぎがより一層大きくなり、ついにヤクザのような輩が出てきた。
「おい雅!行くぞ」
「ああ」
雅と高杉はその場を去った。
その後、危機一髪助かった女の子は母親に抱き締められて、母親は「あー良かった良かった」と嗚咽した。
女の子は、助かったのがあまり一瞬だったため、未だに助かった自覚がなく、ぽけーとしてた。
「ッ!まさかこんなことになるとはな」
高杉は雅と一緒に暗い道で小走りで逃げていた。
雅が刀を使って、あんな助け方をしてしまったことで、大騒ぎになった。
人助けは善行だが、それで注目を浴び、目を付けられてしまうのは避けなくてはいけない。
自分たちは幕府の反乱分子。もし素性がバレてしまい捕まれば、牢屋にぶち込まれてドラクエはゲームオーバーだ。
向こうで松陽に会えるかもしれないが、そのために自ら捕まりに行くのは馬鹿だ。
「……すまん。これから祭りだというのに。祭り好きのお前には申し訳なかったな」
走りながら雅はさっきの事態のことの謝罪をする。
「そうだな!だが、きっと俺もお前と同じことをやってたぜ」
2人は走りながらも、幼なじみらしいことを話す。