第5章 人は皆 十人十色
「は?何で?」
桂はシリアスな顔に真剣な眼差しで雅を見ていた。
「何で高杉?」
何年もの縁なのに、今聞くのには何か理由があるのか?
「何というか、最近仲が良いなと思ってな」
仲が良い?そうでもないが…
「何も。それか何だろう、何か誤解されてるってことかな?」
「……」
それでもヅラは、答えにあまり満足してなさそうな顔だった。
「…言いたいことがあるんだったら、はっきり言えば」
桂は励ますかのように、雅の背中に手を当てた。
「悩みがあったら、相談に乗るが」
「?」
桂は今朝のことを盗み聞きしていた。
途中からしか聞いてなかった、あの雅が自ら高杉に話をしたと知り、焼き餅を妬いていた。
他の仲間からは、高杉よりも相談されることが多いのに雅が高杉を選んだことに不満のようなものを感じていた。
雅も分かっていた。
桂は昔から銀時と高杉の仲裁役であり、この軍をまとめ上げるリーダー格がある男でもある。
その分仲間からの信頼も厚く、もちろん雅自身も信頼していた。
(そーいうとこは優しいよヅラは。昔から)
「ありがとう。今は特にないから今度相談するとしよう」
「…そうか」
桂は雅の背中から手を離した
彼女の表情を見て思った。
やはり雅の表情は、あまり変わらない…
“ありがとう”と言うときも、微かに口元が緩むだけ
ほんの“一瞬”(ひととき)でもいい。雅の満面の笑みが見れたら…
桂も、銀時と高杉と同じ気持ちだったのだ…
「おはようございます」
きりのいいところで聞こえたその優しい声(小○賢章)は、
「黒子野」
先日茶菓子の差し入れをくれた黒子野だった。
「お久しぶりです。今日は雅さんも出るんですね」
さっきと似たようなことをまた言われた。
「そうだ…前はありがとう。ういろうとてもおいしかったよ」
「お口にあって良かったです」
黒子野は満足そうな笑みをこぼした。
「すいません直接渡せず。高杉さんに頼んでしまって」
雅は首を横に振った。
「気にしないで。私もお礼を言うのが遅くなったからおあいこだ」
経緯がどうであれ、むしろいい機会を得られた。