第5章 人は皆 十人十色
待機してると、茨木という1人の男が私に話しかけてきた
「あ、雅姐さんも出るんですね?!」
人によって“雅姐さん”なんて呼ばれる。呼び名などどうでもいいが
「今日はよろしく」
その人に続き、周りの人たちも話しかけてきた
「雅姐さんがいるとは心強い!」
「安心してください!何かあったら俺が姐さんをお守ります」
「手当てのお手伝いをさせてください」
大勢が押し寄せてきて、全員に挨拶しきれない
「あ、ありがとう…」
雅が紅一点である時点、目立つのはいつものこと。
人付き合いは好まない方だが、意外と人気である。
あと押しに弱い…
すると、桂がフォローに来たかのよう現れて隊に呼びかけた。
「お前たちもうすぐ出発だ。荷物の確認かおしっこタイムでもとっておけ」
「桂さん。俺たち遠足に行くんじゃないですよ」
「クラスにもいるだろう。1人だけトイレに行きたくなり、先生に頼みわざわざパーキングエリアにとめてもらうが、行列トイレという過酷な現状。ようやく用を足し、バスに帰ってきたら、クラス全員の冷たい目線に重い空気。貴様らも嫌だろ?」
『……』
隊全員がリアクションに困った。
(私も思ったが、遊びに行くんじゃないよな)
その後アドバイス通りトイレに行った人は何人かいた。
桂は腕組みをして、雅の隣に来た。
「雅。お前はいいのか?」
「私はそのクラスの1人になるつもりもないし、まっぴらごめんこうむる」
彼女はこの時ふと、今朝辰馬に言われたことを思い出した。
“おまんが戦に出る日も、いっつもそわそわしちょうて”
(戦前になると、ヅラはいつも「無茶はするな」と念を押してくる…)
心配性な所は昔から変わらん
でもそれは、私が女だからかそれとも医者だからか
ひいきされてるみたいで良い心地はしない
ぶっちゃけ、銀のテキトーさとヅラの心配性を合わせて2で割った感じくらいが、私にはちょうどいいと思う
「お前は俺たちの要なのは自覚してるな?無茶だけはするな」
「知ってる」
思ったそばから…
また言われたとヅラの心配性に飽き飽きしてたら、今度は意外な質問をされた
「お前、高杉のことをどう思っている?」