第16章 愛しさと切なさは紙一重
しばらく会話と思考を巡らせていると、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
提灯で照らされた道は屋台と人の活気で賑やかになっていた。お昼の繁華街とは別の夜の街の顔みたいになっている。
男の子が友達を連れて数人でキャッキャ言いながら、道を走っている。
女の子は普段は着なれてなさそうな祭り用の着物を着て、ゆっくり道の端を歩いている。
別の女友達が後ろから「わっ!」と声を上げてその子の背中に触れたら、びっくりしてつまづきそうになる。
「もうやめてよ!」と怒ると、「ごめんごめん。もうしないから祭り楽しみましょ」と、驚かした方の女の子は手を繋いで、2人で奥の人混みへと行った。
ただ2人とも、着物がきついのか動きがぎこちなく、履き慣れない履き物でつまづかないよう足元を注意深くみながら歩いて行った。
(あ、そういえば私はもう慣れたな……)
私は今更ながら、自分もらしくもなくおめかししていることを思い出した。
この暗い中だからこそ、鮮やかで綺麗に見えるオレンジ色の着物。
そして今自分は、死神のお面を被っているため、通りすがる人々は二度見する始末。
「変わった連れだな」と言っているような目を、周りの人は高杉に向けた。
「だいぶ混んできたな。はぐれたら面倒だ」
高杉は雅に右手の方を差し出したが、雅は右手を出したので、手の繋ぎ方が変になった。
右手と右手。これじゃあ握手だ。
「おい。左手を出せ」
「……」
雅はしぶしぶ左手を出した。包帯が巻かれている方の手だ。
(ああそうか…!)
高杉はそれを思い出して、自分が左手の方に変え雅は右手でいいようにしようかと思った。
しかし、人ごみであまり身動きが取れない状態だったため、その彼女の左手を取って一緒に歩き始めた。
(以前コイツに聞いたな。何でいつも左手に包帯巻いてだ?とな…)
だがあん時あいつは返答しなかった。今よりも愛想が無かったからな。
なら、“今”は……
「……なあ、その左…」
「願掛けで巻いているだけ」
高杉が言い切る前に、彼女は刀のように一瞬でスパッと言い放った。