第16章 愛しさと切なさは紙一重
人を殺すことは簡単。だが生き返らせることは不可能だ。
どんなに医術が進歩しても。私の師でさえも、それは無理だろう。
「!」
しみったれた話をしていると、通りの縁側にお面の屋台があった。
あたりはもうすっかり暗くなり、これから本格的に祭りが始まる頃だ。
雅は屋台をまじまじと見た。
「欲しいのか?」
コクリッ
雅は頷いた。
「はーいっらっしゃい!祭りといったらお面だよ~」
近くで見てみると、色んな種類がある。ジャンプ人気作品の顔がいっぱいだ。
(昔、雅がレンジャーものを選んだのを思い出すな…)
こいつ。お面が好きなんだな。
「お前はどれが欲しぃ……」
雅は1つを指差して、屋台のおじさんとお金と交換して、それを取った。
(金くらい出してやるのにな…)
「お前。そ、それは…」
雅が選んだのは、BLE○CHの○護が虚○した時のあの骸骨のお面だった。
「もっと華やかなデザインの方がいいじゃねーか」
「私が何を選ぼうといいじゃないか。それに、死神と呼ばれてる私にはお似合いだろう」
そう言って顔に取り付けた。
せっかく化粧ときれいな着物を見繕ったのに、怖いお面を付けて何だかもったいねェ。
「あんたにつき合っているんだ。これくらい妥協してくれ」
「ああ…」
(こいつ……幕府を警戒しているから、この人混みであまり顔を見せないように……)
高杉は雅がなぜお面ばかりを好むのか、何となく理由を察した。
「それで、何の話をしていたのかな?」
さっきまで自分たちは何を話してたか。
「……奈落や幕府のことだが」
「そうだったな。アイツらのことだ…」
お面をしているせいで、彼女の顔が見えず余計に彼女の心情が読みとりづらい。
が、彼女が幕府や奈落に対して憎悪に近い感情を抱いているのは、もう分かっていた。
「……アイツらのことが憎いか?」
「……これから私は、医者として恥ずべきことを口にするかもしれない。これは医者としての使命感ではなく私情だからな。それでも聞きたいか?」
雅の個人的な感情。
彼女は私情を持ち込むことを断じてせず、医者としてその責務を全うしてきた。