第5章 人は皆 十人十色
「あんな怖ェ顔したらせっかくのべっぴんさんが台無しだな」
「銀時、アイツに気があんのか?」
「へ?高杉くん知らないの?アイツ結構モテモテなんだぜ。誰かさんと似ててよぉ」
嫌みったらしく言ってきたコイツ…
「だが俺は、アイツの笑顔でも泣き顔でも拝みたいもんだ」
「てめーがそういう趣味なんじゃねーか?」
さっきから言ってることズレてるのはわざとなのか?
銀時は軽い笑みをこぼした。
「こんな戦で女の笑顔ほど、見て気持ちが和むもんはねェと思うんだがな」
「!」
笑わねェのは元々の性格か、それとも…
「アイツは何か隠してる。数年の縁の俺たちにも言わねェ何かを」
“私のことをアンタに話しても何にもならない”
理由はないが高杉はそんな気がした。
「そーだろうな…」
銀時は初めて会った時のことも覚えていた。
(俺だけでなくこんな奴まで拾って、松陽も物好きだな、なんて思ったな)
いつもしんみりしてポーカーフェイスかまして、何考えてんのかも知りゃしねェ
昔から、誰にも気を許してないような感じだった
「そこまで気になんなら聞いてみるもんだな」
「…それができたら苦労しねーよ…」
高杉は小声でぼそりと呟いた。
「へ?何て?」
「何でもねー」
二度言うことを嫌う高杉は目を反らした。
「ま、誰だって隠し事の1つや2つあるもんだしよ」
「そうだな…」
珍しく喧嘩腰にならなかった…
〈雅の部屋〉
雅は弓の弦の張り加減や矢の数と刀の確認をした。
(刃こぼれなし…)
白いはちまきを付け、青い陣羽織を着た。
左手の包帯を取り替えて、刀を右腰に携えた。
小さいバッグには簡単な医療器具や薬を入れた。
あくまで簡易なもので、他は大きな荷物として別に用意してある。
煙管を引き出しにしまおうとしたら、そこに1枚の写真があった。
(………)
煙管と取り替えるように取り出し、落とさないよう懐の奥深くにしまって、それから部屋を出た。
外には、鬼兵隊など多くの軍勢が待機していた。
雅は隅っこの木に寄りかかった。
あくまで医者で戦闘要員ではない彼女は非常勤みたいなもの。
月曜は鬼兵隊で火曜は辰馬の軍隊となど、シフトは場合によって変わる。
そして今日は桂率いる軍隊だ。