第16章 愛しさと切なさは紙一重
「!」
“雅と一緒”
協調性があまりない彼女が、自分から同じであることを認めた。
高杉はたとえ些細なものでも、雅と一緒なのは決して悪い気分ではなかった。
「さっきから周りからの視線が気になる。全身に穴が空きそうだ」
「ここにいる奴ら全員目からレーザービーム出すってか?」
「そこまでは言っていない。ならそれに含まれるアンタが私を見るということは、さっきから私を殺す気?」
「!」
雅は高杉がさっきからチラチラ見てきていたこともお見通しで、しかもまるで自意識過剰みたいな発言を平然としている。
「お、お前を殺すわけねェだろ?……だが…もし俺のせいでお前が死んだりしたら、俺も心中するかもしれんな」
「!」
雅は驚いて足を止めた。
「…その言葉、医者としても…友としても聞き捨てならないよ。冗談ならもっとマシなことを言って」
雅の顔も声も怖くなってしまった。
「……そう…だな。悪かった」
高杉自身を含めて仲間全員を救ってきた雅にこんなことを言うのは、侮辱に等しい。
今までの彼女の治療を、彼女の努力を全て水の泡にするようなものだ。
雅は幾度の戦で多くの負傷者を治療するが、治療中の目の前で息絶える者も多い。
が、彼女は決して哀しまない。動揺しない。
次の負傷者が来るから、哀しむ余裕などない。
それに、亡くなった負傷者達の中でも、自分は重傷でもう助からないと悟っている者も中にはいる。
だから、自分よりもまだ助かる見込みのある仲間を救ってほしいと願うこともある。
彼女は実際そんな声を何度も聞いてきた。
だから、彼らの勇姿も雄志も、死に際の意志も想いも全て無駄にはせず、1人でも多くの人を助けるために、メスを取る。
彼女のそんな覚悟を雄志をむげにするのは、全くもって鬼畜だ。
「……」
今の会話で少し空気が悪くなってしまった。
(何してんだ俺。雅を怒らせるなんて……)
今までで一度としてないこの機会を泡にするつもりか…?
「…アンタが死ねば悲しむ人もいる。私は戦でそう言ったはずだよ」
「そんなこともあったな」
「敵に倒されるのが屈辱なら、自ら命を落とすのはさらなる恥で愚行だ。アンタがそんなことするのは、私は…絶対に嫌だよ…」