第16章 愛しさと切なさは紙一重
辺りはどんどん暗くなっていき、祭りの主催者たちが、提灯が連なっている細いロープを柱にかざした。
提灯の赤い明かりが灯り、周りの子供達のテンションがさらに上がった。
そんな子ども達の母親らしき集団が、道を歩く男女を見て、微笑ましくなっていた。
「あそこのカップル。お似合いねえ」
「いいわ~若いって。私もあの頃に戻りたいわ」
「うちの旦那なんて、「出産して体型崩れたんじゃないか」って本当にデリカシー無いこと言うから」
「今も所帯持って幸せだけど、ああいう純朴な幸せも、ちょっと憧れるわ~」
なんて、高杉と雅のことを羨ましがっていた。
今日の彼女は、橙色のきれいな着物と彼女に合わせた大人しめな雰囲気の化粧で着飾っている。
だからここまで言われることは一度もなかった。
高杉は自分達以外の歩いている男女を見かけては、女性の方を見てみた。
確かに世間一般のめんこい娘は何人もいたが、高杉にとって一番のべっぴんは、隣の彼女だった。
(なんて自慢話を頭でしちまって…自分で恥ずかしくなってくるぜ……)
それほど想うということは、もうごまかすことなんてできない。
(俺は雅に完全に…惹かれている……)
その容姿だけじゃねェ。
その誰にもとらわれない強い心も、一見冷たいが本当は仲間想いの優しいところも。
(昔は嫌いだったのにな。他人に興味を示さず独りでいたコイツが)
まるで俺達に眼中がなく、あったとしてもゴミのように思ってんじゃねェかなんて、そんなことも思った。
悪く言えば協調性がない。よく言えば、孤高。
たとえ独りでも、決してその決意や歩みを止めることァねェ。
俺はそうところを今まで見てきて、そこに惹かれたんだな…
「さっきから何か言いたげにしているけど。何か私に聞きたいの?」
雅は目の前の道だけに目を向けているはずなのに、隣の高杉の様子を見ずに分かった。
長年の医者の勘で、呼吸や歩く音だけで、その者が今どんな状態でいるのか、どんなことを考えているのか。
それらを聴覚だけで断定した。
「いや…なんつーか、やっぱりこういう機会は滅多にねェから、落ち着かねえだけだ」
「……なら私と一緒だな」