第16章 愛しさと切なさは紙一重
「……」
「……」
高杉と雅は特に何も喋らず、横に並び街の中を歩いた。
高杉は隣の雅を横目でチラッと見ていた。
陣羽織でも普段着でもない、美しい着物と化粧で着飾っている彼女が本当に新鮮で、違和感を覚えた。いい意味で。
(周りから見たら俺達はあのガキが言ったように、若夫婦なのか…?)
ちょっと先に若い男女が手をつないで、キャッキャキャッキャして街を徘徊している。
遠くからでもとても楽しそうなのが分かる。
(手か…)
自然に彼女の左手に目を落とすと、手甲をつけていることに気が付いた。
戦では両手に付けていて、拠点の寺では左手だけに包帯や違うタイプの手甲を付けている。
(こんなおめかししても付けているのか……一体何があるんだ?その左手には)
「私と街を歩くのはやはりつまらない?」
雅は高杉に聞いてきた。
(いやそれは俺よりてめェの方が当てはまるぜ)
彼女がいつもつまらなさそうなのは変わらないが。
「俺ァただ、てめェがその着物似合うから、ちょっと……見とれてただけだ」
「!」
高杉は顔を背けて小さな声で答えた。
「……なら、藍屋勘が用意してくれたかいがあったな。あとで礼を言おう」
雅は少し顔が柔らかくなった。
「……俺は別につまんなくはねェ。むしろ、お前と色々話もしてェし、こうやって戦場ではない普通の場所で、ただの同期として過ごすのも悪かねェなんて思っただけだ」
高杉は黒子野が言ってくれたことに習い、雅と2人でいることは本望であることを伝えた。
「……確かに、悪くないかもな。たださっきも言ったが他の仲間に見られたらどうする?」
「安心しろ。他の奴はとっくに帰った。何やらどんちゃん騒ぎの準備で、隣の港町に行ったとよ」
まあそれは、黒子野が高杉が雅と過ごしやすくなるように手配したからだけどな。
高杉は内心、黒子野にとても感謝した。
今度何か上等な物を贈ろうと思った。
「偶然にしては出来過ぎているようにも思えるが…」
ドキッ
「まあいい。アンタがそう望むなら。アンタには三郎を貸してもらった借りがある。付き合おう」