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君想ふ夜桜《銀魂》

第16章 愛しさと切なさは紙一重



「……」
「……」

高杉と雅が娘と藍屋勘とその主人と、机を挟んで向かい合わせで、畳の上で正座をした。

(何なんだこの面子?)

私とこの2人ならまだ分かるが、友人の晋助も一緒なんて。

コイツからしたら初対面なのに。

「まさか診察以外でいらっしゃるとは思いませんでした。もう一度先生に会えてよかったわ」

「たまたま会っただけです。私は別の用事で来ていましたから」

高杉からしたら、雅が仲間以外の別の誰かと話をしているのが新鮮で何だか不思議に思った。

しかも“先生”の呼び名が根付いている。

「アナタの方は、先生とは古い仲なのですか?」

藍屋勘は高杉の方に話を振った。

「……小さい頃、同じ塾に通っていた同期ってところだ」

「そうだったのですか。では、以前付き添われた長髪の方も…」

「はい。彼も私の同期でした」

雅は藍屋勘の質問に答えた。

去年、利兵衛の手術に付き添ったのは、高杉ではなく桂で、藍屋勘はそのことを聞いた。

(長髪って…ヅラのことか……)

鰻屋で去年のことを話をしたが、もしかしてその時のことか。

「?」

藍屋の主人が、話をしている雅よりも寡黙の自分の方をちらちら見てくるのが気になった。

(何なんだ…?)

次の藍屋勘の発言で、違和感の正体が分かった。

「本当に嬉しいわ。しかも旦那さんも連れてくるなんて」

『!』

高杉も雅も、互いのことを旦那や嫁などといった発言をした覚えはなかった。

途端に2人が目を丸くしたのを、藍屋勘は疑問に思った。

「あれ?違うのですか?それか婚約者とかですか?さっき娘からお2人のことを聞いたのですが…」

「!」

高杉は新幹線のような速さで娘の方に目を向けた。

娘は高杉にニコッと笑顔を向けた。

(あのガキ……!)

やっぱり俺がコイツに気があるとバラしたのがまずかった。

さっきから目の前の藍屋の主人が俺を見てくるのは、そういうことだったのか!

「あの…その様子ですと、もしかして娘が失礼なことを……」

「いえ、間違ってないです。婚約者ですよ。彼は」

!!

高杉は「は?!」と大きな声を出しそうになったが、何とか平然を保とうとお茶を飲んだ。

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