第16章 愛しさと切なさは紙一重
名前が言えない理由をごまかすためとはいえ、ジョークを言って何だか恥ずかしくなってきた。
「お兄さんと先生って、本当にただのお友達?」
「は?何でそんなこと聞く?」
「えーと、何となく」
少女は笑顔を浮かべた。それは女の子らしく可愛らしい、普通の子がよくやる普通の笑みだ。
高杉はそれを眺めた。
(アイツもこんくらい、笑ってればな……)
「ダチといっちゃダチだが、特殊なダチだな」
一緒に戦で命を預け合ってる仲なんて言えるわけねェな。
今こうして街中を一緒に歩いて楽しんでるのは、ほんの一時のいとまだ。
(そういや、俺は成り行きで雅とこのガキをつけているだけで、アイツと遊び歩いてるってわけじゃねェか…)
このガキとの用事を終えた後、俺がまたアイツを誘うか。
夜の祭りに間に合うのか?
高杉は甘い若鮎を食べた後で、お茶が飲みたくなりズズッと飲んだ。
「お兄さんって先生のこと好きなの?」
ブッ!
お茶を吹き出しそうになったが堪えて、そのかわり喉奥が痛くなり咳をした。
「ゲホッ、ゴホッ」
「やっぱりその様子だとお兄さん……」
「な、何言ってんだ!!断じて……」
“違う”
その言葉を口に出せない。出そうとしても、頭が
・・・
“それは違う”と止めてきた。
「……そんなこと知って、どうすんだ?」
「フフッ。正直だね」
女の子は面白おかしく笑った。
17歳が13歳くらいの少女に振り回されている。
こんな屈辱的なことがあるか?
銀時にバカにされることも嫌だが、これは別の意味で嫌だった。
「私はただちょっとホッとしたの。アナタみたいな人が先生の隣にいて」
「?」
さっき黒子野にも同じようなことを言われたが、今回はまさかの年下からとは。
(コイツ、そう言えるくらい、雅のこと知ってんのか?)
雅は名前を伏せるくらい、あまり人とは関わらねェのに…
高杉は少女が言うことに興味を持ち始めた。
「先生ってすごい人だけど、すごい人が皆幸せとは限らないじゃん。先生を見てると、何だかとても悲しい気分になるんだ。幸せじゃなさそうって」
「!」