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君想ふ夜桜《銀魂》

第16章 愛しさと切なさは紙一重



「……久し振りだね」

「髪が短いから分からなかったわ。どうしてこんなところにいるの?あれ、そちらの方は?」

藍屋勘の娘は、雅の隣に立っていた高杉のことを聞いた。

去年先生に付き添っていた長い髪の人とは違う男性だ。

「もしかして、その人が先生の弟?」

「!」

「違う。親友だ」

高杉は思った。そこは弟というより、恋人とかが無難じゃないのか?と。

それくらい自分は子供っぽく見えるのか、この子供は。それとも、雅がやたらと大人びて見えるのか。

「こんなところで会えるなんて、すごく嬉しい!」

子供は満面の笑みを浮かべた。

雅はそれにつられることはなく、相変わらずしれっとしていた。

(子供相手には優しいみたいなタチでも無かったのか……)

高杉はギャップ萌えというものを少し期待していた。

「先生。良かったらうちに寄ってよ。弟の利兵衛もきっと恩人の先生に会いたがっているわ」

(恩人?なるほどな…)
    ・・
だから、先生か。

高杉は察した。

「私は別にいいけど……」

雅は高杉の方に目を向けた。

高杉はこの案件に無関係の者だから、このまま別れるか。それとも…

「……俺もついて行っていいか?」

「いいよ。先生の友達ならきっと父上も歓迎してくれるわ」

こうして藍屋勘の娘に誘われることになった。

「いいの?付き合わせて」

「別に構やしねェ。1人で暇だったからな」

「意外だな。アンタ子供苦手だと思ったが」

雅は前で歩いている少女に聞こえない程度で高杉に言った。

「まあ、確かに得意じゃねェが興味があるんだ。てめーが“先生”って呼ばれることに」

「……“先生”、か」

この少女が言えば、それは雅のことを指す。

高杉が言えば、それは松陽のことを指す。

雅が言えば、それは愁青のことを指す。

皆にとっての“先生”は、同じ言葉でも全く違う人間を指している。

(私は、松陽だけでなく、“あの人”(愁青)と同じ言葉で言い顕されるくらいの…そんな大きさがあるのだろうか……)

名前を教えられない都合で仕方なくそう呼ばれているのだが、やはりあまりその呼び名は好きじゃない。

私はあの2人ほど偉大でも立派でもないから。

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