第15章 金では得られないモノもある
「大丈夫か?何もされてないか?」
雅は首を振った。
「だ、大丈夫」
「……」
ヒョイ
「!」
は?
高杉は急に雅を抱っこして持ち上げた。
「な!何をするの?何もされてないかと聞きながら、アンタがしてんじゃ…」
「前みてーに嘘ついてねーんだよな?」
雅はおんぶとか、身を預けるのが苦手だ。
こうでもしなければ彼女は口を割らないと高杉は思った。
「嘘じゃない。背後に気配を感じて、走ったらここに辿り着いたんだ」
敵が目の前にいるのに、こんなことしてる場合じゃないだろ。
高杉は雅をゆっくり降ろした。
((何、人前でいちゃいちゃしてんだコイツら?))
こちらも2人であちらも2人で2対2。さてこの無闇に動けない状況をどうするか。
(一応私は医者の身だから、戦以外のこんなところで無闇に傷害も殺生もしたくない)
だからと言って向こうについて行く義理はない。
「女。来なければその男諸共斬り捨てる」
「うちのおじきはお前に非常に興味がある。そう簡単に傷物にはしねーよ。うまくいきゃ縁談の話もあるかもな」
ギロッ
高杉はヤクザ達を睨み付けて、雅を自分の後方へ回した。
「おい…てめェは先に行け」
ヤクザ達に聞かれないよう小声で言った。
「それはできない。自分の不祥事は自分で方を付けるのが筋ってもの。てか行くってどこに?」
「銀時達がこの街のどこかにいるはずだ。ソイツらのところへ行きゃ少しは安全だ」
つまり、時間稼ぎをしているうちに、他の仲間の元へ行けと。
(それじゃさらに被害を拡大するだけだろ。ヤクザに銀達と一緒にいるところも見られれば、アイツらまでターゲットにされる)
現時点で晋助を巻き込んでいるのに。任せて逃げるなんてことできない。
晋助が刃一つでもヤクザと交わった時点で、晋助は完全にヤクザを敵に回す。
私よりも危険人物と見なされる。
(何か、刀を抜く必要もなく、この事態を収める方法は……)
何とかついて行けない理由を作らなければ。
!
雅は高杉の腕をつかんで上に上げた。
「この人私の旦那だから、アンタらのところには行けない」
『!!』
は?