第15章 金では得られないモノもある
「追い詰めたぞ。女」
ヤクザ達は行き止まりの裏路地で雅と3人きりになった。
「で、何の用?」
「とぼけるんじゃねェ。すでにこっちに情報は入ってんだ。何やら怪しいよそ者の女が俺達の敵に加担してるってな」
1年前から、組長の容態が安定しているか確認するための定期検診には来てたが、やはり隠しきれなかったか。
そりゃそうだ。数ヶ月に一度、怪しく身を包んだ女がヤクザの家に出入りしていたら、誰だって怪しく思う。
(……身長がもう少しあれば、少しは女じゃないように見えたのかもな)
なんて、高杉のように悩む余裕もあまりなかった。
「女。俺達はお前をこちらに連行しろと、うちのおじきから仰せつかった。だから大人しくしろ」
「…意外と生ぬるいんだな。怪しい奴はすぐに殺すと思ったが」
「それは話を聞いた後におじきが判断する。抵抗するならば、足を斬って動けなくしてから連れて行く。喋れなくならんよう喉は切らんが」
ヤクザ達はさらに鬼のような形相に変えた。まるで、ハッタリでないことをこちらに教えているような。
「素直に承諾した方がいいぜ。さもなきゃお前はとんでもない輩を敵に回すぜ」
「とんでもない輩?私が今見えるのは、烏合の衆だが」
互いに刀を今に抜きそうな勢いで相手に面と向かう。
雅は右腰にある黒鞘の刀に手を伸ばした。
(本当は戦で初めてを使いたかったが……)
「雅ッ!!」
「!」
戦で聞き覚えのある声がして、雅は刀から手を離した。
ヤクザ達の後ろに、高杉がいた。
(晋助…?)
雅は予想外の介入にビックリした。
「何でアンタがここに…!」
「それはこっちのセリフだ。ていうかこのやり取り前もやんなかったか?いやそれより、これがてめェの言う有意義な休日の過ごし方か?」
「何だてめェ?この女の知り合いか?」
「そっちこそ何者だてめェら?」
高杉は自分の刀に手を伸ばした。
「ソイツは大事な奴だ。少しでも傷付けてみろ。腕一本じゃ済まねェぜ」
マズい…晋助が刀を抜けば。
危険を感じた雅は、高杉に気を取られているヤクザ達をかいくぐり、高杉の隣まで来た。
「あッ!てめェ!!」