第15章 金では得られないモノもある
「俺は自分の帰る場所に戻る。アンタが救ってくれた場所だ」
「……一つ聞きたい。ヤクザでは裏ルートで、あらゆる情報が流れてくるの?」
「ああ。俺は頭として組を守るためにあらゆる情報網を握っているが」
「……その情報通に質問する」
雅は左手に巻いてあった包帯をほどいて、左手の甲を頭に見せた。
・・
「それは……」
・・
それが、左手を隠していた理由か?
・・
「コレに、見覚えはある?」
雅はいつも以上に真剣な眼差しと顔つきで、頭に聞いた。
「……いや、悪いが見たことねェな。
・・・
そんな珍しいものなら、絶対記憶しているはずだから」
「そうか…分かった。ではこのことも内密に頼む」
雅はまた包帯を巻いた。
「じゃあこれで失礼する」
「……調べてみよう。次来られた時のために」
雅は組長の定期検診のために、数ヶ月に一度訪問することを約束してくれた。
それまでなら時間がある。
「何のために探しているかは知らないが、それほど大事なことなら協力しよう。安心してくれ。ヤクザは簡単に情報を漏らさない。役人や別の組に知られたら厄介なヤバい情報もあるからな」
「ならお願いしよう」
組長にならって頭も自分なりに雅に恩返しできたことで満足した。
「じゃあ頑張れよ。戦」
こういう経緯で、雅は戦前に何とか刀を手に入れたのだ。
そしてその刀は、山での奈落との戦いで折れてしまった。
そして現在は……
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(ッ!どうしてこうなった…)
追われている気配がして、小走りした途端に、後ろの気配がはっきりした。
2人ほどの男が、私を尾行していた。
裏路地のところに入ることで、男達に追い詰めたと思わせて、逆にこっちがあえてこの場所へ誘導した。
道中だと人が多くて満足に会話もできない。
コミュニケーションはあまり好まないが、今回はどうしても聞かなければならない。
こんな小娘に何の用だと。
(大方、私が肩を持ったヤクザと敵対する別の組だ。私が重要参考人として目を付けられたってところだろう…)
でもまさか、こんなところで、“新しい刀”の試し斬りする機会が訪れるとは……