第15章 金では得られないモノもある
雅は今度は、頭にある場所へ案内された。
「ここだ」
そこは、ヤクザしか知らない暗黙の場所。闇市場だった。
「ここで俺達はよく買収する。裏ルートで手に入れているから、“表”じゃ目にかかれモンもゴロゴロあるぜ」
あたりを見渡すと、薄気味悪い店が並んでいる。
その店にさらに薄気味悪そうなヤクザ達がゴロゴロ並んでいる。
こちらを睨んでくる。
(こんな場所に“私”(女)は場違いか。お一人様で焼き肉とは次元が違うからな)
「……なぁ、お前に一つ聞きたい。こんなこと聞くのもなんだが、なぜ助けてくれた?」
頭は背を向け先導したまま、後ろの雅に話しかけた。
「“俺達”(ヤクザ)に関わったことを知られたら、命を狙われかねない。アンタは俺達の恩人ではあるが、ヤクザの恩人になることは別の奴にとっては敵になる。察しのいいアンタは分かっていただろう?」
「……私は元々はみ出し者だ。1つや2つのヤクザの片棒を担ごうと、私がそうであることに変わりない。それに…これは組長だけのためじゃない」
「?」
「組長が亡くなれば、若い者達の行き場も無くなるだろ。私は、誰かの未来が消えるのを黙ってみてるわけにはいかない」
「アンタ…」
頭は後ろを振り向いた。
「アンタらは確かにヤクザだが、決して悪い奴らじゃない。居酒屋のおやじさんみたいに」
雅はあのおやじさんが、元ヤクザであることに気付いていた。
この街にはヤクザが隠れ潜んで、その暮らしを、街の経済を支えている。
だから、組長を救うことはヤクザ達を救うことでもあり、この街のためでもある。
「……へっ。俺はアンタが気に入ったぜ。アンタみたいな骨のありそうな奴。うちにも欲しいもんだ」
「悪いが、私には先約がいる」
そしてちょうど刀屋についた。
「しっかし、こんなご時世に刀とは。戦でも始める気かい?それとも、手術にはこんな物騒なモンも必要なのかい?」
頭は腰に差してある刀を示した。
「……手術は救うことしかできない。だから刀で護るんだ。救った人を」
頭と雅はその店の奥に入っていった。