第15章 金では得られないモノもある
ザワ……ザワ……
ヤクザ達はまるでカイジのような緊張感で外で待機していた。
組長が死ねば、この組は確実に終わる。
組長の体調が優れないことを、今まで他の組に悟られないよう騙してきた。
だが、騙しているうちに、組長の容態は悪化した。
もうこれが、自分達がヤクザでいられる最後の時になるかもしれない。
ガラッ
『!』
部屋から雅が現れ、ヤクザ達が今一番知りたいことを一言で答えた。
「成功だ。もう心配ない」
歓喜するヤクザ達、麻酔がまだ切れていなく寝込んでいる組長のそばに行くヤクザ達、雅に感謝の意を示すヤクザ達。
「よ″がっだですぅ~ッ!!」
「ありがとうございます!!姐さん!!」
“姐”(あね)さんと言われる始末。
「すげーよアンタ!!一体どこでそんな技を身に付けた!?」
「悪いがそれも極秘だ」
雅はヤクザと全く慣れ合う気はなく、組長の麻酔が切れて、容態が安定していることを確認でき次第、すぐにここを立ち去るつもりでいた。
「……」
ヤクザの頭は凛々しく立っている雅の横の姿を見つめた。
組長は目を覚まして、布団で体を横にしながら雅と話をした。
これまでの成り行きや病気について諸々。もちろん、術後の診察もやり、安全を確認した。
「そうか。お前さんがワシを助けてくれたのか。礼を言う」
「……疑わないんですか?こんな小娘がうそぶいているかもしれないと」
組長は手術後とは思えないくらい大声で笑った。
「ワシはこの組の長として、長年あらゆる人間を見てきた。お前さんの目を見れば分かる」
(なるほど…年長者なだけあって、人を見る目はあるのか…)
雅はやることを全て終えて、組長に帰ると言って一礼した。
「待て。まだ終わってない」
「?。いえ、アナタの手当ては全て……」
「何を言ってる?お前さんは、まだこのワシからの恩賞を受け取ってないじゃないか」