第14章 少女よ、大志を抱け
(不可抗力だったとはいえ……!)
銀時の視線を感じて見てみたら、ニタァと何かよからぬ事を企んでる笑顔をこちらに向けていた。
(ま、まさか……気付いてやがるのか…?!)
ガタッ!
高杉は急に席を立った。
「も、もうそろそろいいだろ。他の客も待ってる」
高杉の催促で、皆は鰻屋を出た。
(ハァ、今思えば取り返しもつかねェことしたんだな俺)
本人は全然気にしてなかったが、そういう問題じゃねェ
それから皆は単独行動で、街中を回ることになった。
元々4人は全くもって馬が合わない、てんでバラバラの方角を見て生きているようなものだ。
戦で目的が一緒だから、何とか共に足踏みしているだけで、プライベートも深入りする義理はない。
(どうせ銀時は甘味屋、ヅラは猫カフェ、坂本はキャバクラってとこだ……)
俺はどこに行こうかね…
ヒソヒソ
「ねぇ、あそこにいるお侍さん。超かっこよくない?」
「本当だ。この街の人じゃなさそう」
「アンタ行ってきなさいよ」
高杉が知らない所で、近くでおなご達が何やらヒソヒソ話していた。
高杉は遊女に指名されたくらい美形設定である。
「?」
高杉は人ごみの中で、妙な者を見つけた。
編み笠を被っていて、股引や脚絆など動きやすそうな服装からして旅人だ。
裏路地に続く入り口あたりで、何故か息を切らして壁に手をつけて体勢を伏せていた。
男にしてはやけに小柄だ。
(ん?……ちょっと前。あれは…)
遠くからで顔はよく見えないが、髪の色が“青”だった。
小柄で青髪。男じゃない。
(雅じゃねェかあれ?)
坂本が出掛けるとは言ってたが、まさか同じ街とは…
しかも何で息切らしてんだ?
高杉は声をかけようと近付いてみたが、何だか様子が変だった。
いつもの冷静な彼女とは違って、よそよそしく周りをキョロキョロ見ていた。
(何あんな慌てている?)
「!」
雅は向こうを見た途端、裏路地の中に入っていった。
すると、見た目が危なさそうな男たちが彼女の後を追ってきた。
(あれは…ヤクザ?!)