第14章 少女よ、大志を抱け
「まー世の中どうなるか分からんぜよ。今のアイツにその気が無くても、その内考えるんじゃないか?自分なりの幸せを」
「自分なりの幸せか…」
旅医者として、あらゆる場所を回るのもいいかもしれない。
しかし、どこにでもいる、普通の家庭を持つ普通の幸せの日々を送るのも、また一つの幸せ。
坂本は雅がそんな幸せを掴むことがあれば、その時は心から祝福したいと思った。
たとえ10年先だろうと、20年先だろうと、100年先だろうと、あ、100年は有り得ないが。
その時なら、もう“死神”なんて呼ばれないだろう。
「だが~もし雅が祝言を挙げるんなら呼んで欲しいな」
「つーか気が早くね?雅が俺達よりも年上だからって、誰より早く所帯持つとは限らねーだろ」
「そうか~?じゃーもしわしが所帯持つことになったら、雅祝福してくれるかのう?その時も雅がきれーにおめかししてくるのを見れるしなー」
「それ言ってる時点で、嫁さんに放棄されんじゃねーかお前?」
花嫁姿より同期の女のおめかし姿を楽しみに待ってる花婿なんて。
「アイツは、愛想はともかく元はいいから、おめかししたら化けるぜよ」
「だが元がいい奴ほどきれーになるのを疎かにする奴だっているだろ。カエラみてーに」
(コイツら何の話してんだ?雅の話から何でカエラに移るんだよ?)
高杉は心の中で銀時をツッコんだ。
もうさっきからツッコミしかしてなくて、高杉も作者も疲れ始めている。
「だがもし雅が旦那を作ったら、ソイツは幸せもんぜよ。夫婦だからキスだって普通にできるしの」
キス?……あ…
「!!」
高杉は飲んでいたお茶を喉に詰まらせて、咳払いした。
ゲホゴホッ!!
「高杉?!」
隣の桂は危うくかかりそうになって驚いた。
高杉は去年の居酒屋でも、雅がエロ本を持ってる説を聞いたとき、同じ反応をした。
その手の話はどうやら全く耐性がないらしい。
「どうした高杉?まさかキスだけで動揺してんのか?ウブじゃのう」
「て、てめーが急にその話題を振るからじゃねーか!」
高杉はすっかり忘れていた。
その夫婦では普通にやることを、雅と二度もやったことを。