第5章 人は皆 十人十色
現在
〈寺の外〉
バシャバシャ
辰馬は井戸の水で顔を洗っていた。
「ふぅ~!やっぱり朝はまっこと気持ちいいの~!」
声のデカい人は朝もデカい
顔を拭くためタオルを取ろうとしたら、
「あ、しまった。タオル忘れてしもうた」
マイペースなのも相変わらずだ。
「どこかにないかの~」
濡れた顔面のままタオルを探してると、すぐそこに自分以外の誰かがいた。
「おや?あれは…」
張り詰めた空気を発する雅
手には弓矢
少し離れた所にリンゴが1つ
一呼吸してから構え、リンゴを狙って弓を引いた
ちゃんと軌道に乗れるよう、僅かな風でも見逃さない
ヒュンッ!
矢を離し、
グサッ
リンゴは見事に命中した。
その途端、大きな拍手が聞こえてきた。
「いや~お見事じゃき!」
辰馬は見事な弓の腕に感動した。
「毎朝練習しちょるとは、見事な武士道じゃ。金時にも見習ってほしいぜよ」
うんうんと深くうなずいて、心底雅の真面目さに感心した。
「…いつもってわけじゃない。たまにやってるだけ。辰馬がこんな早起きするとは少し意外だね」
特に辰馬と話す気はなく、弓矢など片づけ始めた。
「アッハッハッハッハッ!昨晩は酒飲んだが、早く目が覚めての~。
しっかし、おまんが高杉とそういう関係じゃったとはなー!」
え?今なんて…?
片付けていた手を止めた。
「確かおまんらはヅラや銀時と同門じゃろ?仲もええしやっぱり幼なじみとはいいのー」
「冗談よして。昨日 高杉はただ私の
どうでもいい話に付き合ってくれただけ」
「どうしても離せずに付き合った?やっぱりそういうことか?」
「どういう耳してんのアンタ?」
雅は呆れてため息をして、片手で頭を抱えた。
「昨晩のことは内緒にしてほしい」
「ん?何でじゃ?」
「何でって…」
辰馬は矢で貫いたリンゴをヒョイッと取り、食べ始めた。
(勝手に食うんかい…)
「私は軍医でアイツは鬼兵隊総督。私たちはただこの戦に勝つために戦うだけ。この戦場で余計な私情は必要ないから」
だから、そういうのは勘弁してくれ…
「じゃが多少のコミュニケーションも問題ないじゃろ?それか見られたくないっちゅうのは、おまんもアイツのこと意識しとんのか?」
意識?別に…ただ…