第14章 少女よ、大志を抱け
「!」
(大切な人……)
昔、私は、大切な人を死なせた。
それは決して忘れることもできない。一生己の後悔の記憶として、心に残るだろう。
そして今の私の大切な人は……
雅は、あの3人のことを頭の中に浮かべた。
(銀、ヅラ、晋助……)
もしまた、失ってしまえば……
(どうしてこんな単純なことに、気付かなかったんだろう?)
昔の後悔とか権利とか、それよりも見るべきものがあった。
(私はあの3人を、死なせたくはない……)
もし、母さんなら何て……
『いつかアナタも作りなさい。そばにいたいと想う人を』
「!」
昔、母親に言われたことを思い出した。
あれは嫁ぐ相手について話していた、ただの茶番のようなものだったが、今は違うように思える。
あんなことを言っていたから、母さんなら私にこう言うだろう。
『もし、大切に想う人がいるのなら、護りたいと思うのは当然でしょ?』
(……)
母さんは父さんのことを、心の底から想っていた。
“病弱で非力な体でも、それでもあの人を護りたい”
母はそんなことを言っていた。
母さんのような愛とは違うが、私も、仲間のアイツらを……
(だけどこれだけは心に留めておく。私は母の死をこの先も忘れることはない)
自分を許す気もないし、乗り越えることもしない。
だから忘れずに、ずっと引きずっていく。
この後悔を心の中に留めて、苦しみから目を背けず、前を見る。
この傷跡は治さず、引きずりながら前を歩くよ。
ヅラ。私はそうさせてもらうよ。
「……服ですが、このデザインはできますか?」
雅は藍屋の2人にあるお願いをした。
そしてデザインが決まった後、採寸して、あとは職人に任せることになった。
「いや~こんな注文は初めてだ。だが、いつも同じもんを作るのは味気ないから、こういうのもやりがいだ!」
旦那は昨日のような冷たい態度とは一転して、雅を普通の商売客として振る舞った。
女などもう関係ない。歳もそんな大した問題じゃない。
ものすごく悪く言えば手の平返しだ。