第14章 少女よ、大志を抱け
(私に、またせんせーの医術を使う資格があるのかな……)
私は正直、まだ立ち直れない。自信が持てないよ。
(取りあえず、明日の検診のためにもう寝よう)
10時間くらい長い睡眠を取ることにした。
そして、夢を見た。
それは、数年ぶりに手術をしたことで、体が反応したのか。
手の動き、血のにおい、鮮やかな臓器、肉片をメスで切る生々しい音。
久しぶりの経験によって、彼女の脳はある夢を具現化した。
目の前には、血を吐き出して苦しそうにする自分の母親がいた。
息も荒々しく明らかに異常だ。持病が悪化したのだ。
彼女は「母さん!母さん!」と何度も呼びながら、冷静を保って麻酔を打った。
“大丈夫だよ。すぐに楽になるから”
実の母親の体だろうが、救うためにメスを持って患部を切ろうとした。
しかし、一瞬にして目の前の光景が変わった。
“!!”
彼女が手に持っていたのは、メスじゃなく刀。
母親は首と胴体で二つに分かれて、足元に落ちていた。
ポタ…ポタ…
刀には、血が滴り落ちていた。
“え……”
自分は母親のお腹辺りをメスで切ろうとしたはず。
なのに、何で私が…母を……
カタカタカタ
彼女は持っていた刀を震わせ、空に向けて大声を上げて泣いた。
“違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
わ、私は……こんなはずじゃ……!”
「!!」
ガバッ!
雅はうなされて目を覚ました。
「ハァ…ハァ……」
胸の奥から圧迫感が押し寄せてきて、気持ち悪くなり咳をした。
「!」
抑えた手の平には、微量な血液が付着していた。
雅は手拭いで拭いてから、ふろしきの中から薬を取り出して、それを飲んだ。
「……ふぅ」
時計を見たら、朝の7時頃だ。
丁度いいタイミングで目が覚めたのはいいが…
(あんな夢見せるなんて……いやそれが、母を救えなかった私に定められた罰なのか…?)
宿屋の洗面所で顔を洗って、宿主のお婆さんに宿賃を払い一言礼を言ってこの場を去った。
それから数分後のこと、閑静荘にヤクザ達が押し掛けてきた。
「!!」
「よぉ婆さん。ちょっと聞きたいんだが、ここに妙な青髪の若女が泊まりにこなかったか?」