第14章 少女よ、大志を抱け
痛みなんてもうとっくに収まっているし、傷もほとんど癒えている。
「私は別に気にしてない。一つの社会勉強だ。アンタがどうこう言う必要はない。それとも、まさか心配しているのか?」
高杉は、彼女と同類で馴れ合いを好まない。
サボテンみたいにトゲトゲした性格だ。
誰かを心配するなんてしないタイプだ。
雅はそう思っていた。
「……」
高杉は雅の質問に素直に答えず、顔を背けた。
「まさか、刀を買おうとしてそうなったのか?」
雅のような成人前おなごに、武器など戦に必要な物を売ってくれる店は、果たしてどれくらいいるのか。
高杉は彼女のことを差別的な目で見ることは決してしないが、この街で何もなければいいがなと少し心配していた。
でも桂が付き添うのなら大丈夫かと安心した。
そして彼女は怪我をした。
(俺を頼りねェ弟だと思ってんのか?)
高杉はさっき雅に弟だと言われたことを気にしていた。
この時は、雅が対等として見ずなめていることが気に食わなかった。
男として見ていないとか、そういうことは思っていなかった。
(まさかヤクザにでも喧嘩売られたんじゃねーだろうな?)
戦前に別の戦を始めるなんて厄介だ。
「そんなんでもない。それに、この程度で心配するとは。これから私たちは戦争をおっぱじめるんだぞ。殴られるだけじゃ済まないくらい、重傷を負う。それか死ぬかもしれない。覚悟ができてないんじゃないか?」
「!」
雅は高杉の手を払った。
「それにいいこともあったから、今の私はそんな機嫌は悪くないんだ」
「いいこと?」
「後は詳しくはヅラにでも聞け。じゃ」
「雅」
桂は雅を呼び止めた。
「俺は嬉しかったぞ。お前が色々と教えてくれて。ようやくお前に仲間と認められた気がして」
雅は振り向いた。
「言うまでもないが、俺はお前を仲間と思ってる。昔も今も、そしてこの先何があろうと。だから俺は何も言わず、ただお前を待っているぞ」
「……」
雅は居酒屋を去った。
「なあ、本当に何があったんだ?何を待ってるんだよ?」
話が全く見えない高杉は桂に聞いた。