第14章 少女よ、大志を抱け
「あ~何を言ってるんだ銀時ィ~?」
桂は酔い気味で銀時に聞いた。
「だって見たことあるんだぜ。雅いっつも同じ本読んでるからよ。何だろって思ったら、何か裸の絵があってな~…」
高杉は銀時の訳分からないことが言ってるのが気に食わなく、酔い醒ましに掴みかかろうとしたが、彼女が一言加えた。
「あ~…それ、見間違いじゃないと思う」
「!!」
雅も酔って正気を失ったのかと思ったが、彼女は全く酔っていなかった。
(嘘だろ雅…)
高杉が思う雅のイメージは、クールで掴み所のない性格で誰よりも節度がある。
まさかそんな卑猥な……
「あれだ。保健の教科書の一番最後のページによくあるあれだ。人体断面図のことだろう?」
桂しか知らない話。雅は医者の卵だから、人の裸の絵はもちろん、実物も見たことがあった。
(何だ。保健の教科書か……)
高杉は内心ホッとして、結局自分の席に戻った。
さりげに雅の隣の席に移っても銀時に、また気があると言われそうだからやめておいた。
「そういや、保健の教科書だけじゃなく、何か黒魔術とかやってたよな?何だったんだあれ?」
銀時は左隣の雅にまた声をかけた。
雅は松下村塾の庭で、棒で地面に絵を書いて、その上で何かをしていた。
銀時はそんな彼女の不審な行動も見たことがあった。
「……言い表すのは難しい。まあ、ただの生け贄の儀式だ」
((生け贄の儀式?!))
桂はお新香をハムスターにポリポリ食べていたが、今ので驚いてお新香を舌ごと噛んで口の中が出血した。
「生け贄の儀式?!」
料理を片手に持ったおやじは声に出すほど、びっくらこいた。
・・・
(ただのって、生け贄の儀式にただもあんの?何そんなやべー儀式、女の子がやってんだよ!)
俺の隣にいるのはそんなヤバい女なのか、と銀時は思った。
まさか酔ってるんじゃないかと思ったが、やっぱりいつも通りだった。
(ハァ。生け贄とは逆のことだが、説明するのがもう面倒いから、誤解されてもまあいいや)
雅が行っていた黒魔術の正体は、手術のシュミレーショントレーニングだった。