第14章 少女よ、大志を抱け
ガラガラ
「へ~らっしゃい。何名?」
「4」
銀時たちは2階のカウンター席に案内された。
左側から、雅、銀時、桂、高杉の順番に座った。
「おやじ、取りあえず酒」
「はいよ。おや、女の子連れかい?あれ!どうしたんだいその頬?」
どんなときも、紅一点の雅が目立ってしまう。
特に今は、怪我しているから。おやじは雅の頬のガーゼを気にかけた。
「それ完全に殴られた跡だろ。どうしたんだい?」
「!」
ここのおやじさんは、若い頃は不良だったらしく、喧嘩はかなりやったのこと。
殴った跡も殴られた跡も、よく分かるらしい。
(困ったものだな……)
客商売は思いやりが第一だが、こうもなるとな…
雅は内心、おやじの見た目とは程遠い勘の良さに驚いた。
(やっぱりな…)
高杉は一番端に座っている雅を垣間見ながら、おやじがくれた酒を飲んだ。
「もしかして、彼氏と揉めた?」
おやじは桂たちに目を向けたが、全員が「彼氏じゃないし無実だ」と首を振った。
その中で高杉は心なしか、首の振り幅が小さかった。
「コイツらはそんなんじゃないし、大したことじゃないです」
「ひでー話だ。俺たちの街はどこの馬の骨だろうと客には優しくする性分の奴ばかりのはずなのに、女の顔殴るなんて」
おやじは雅に元気出せよとサービスで杏仁豆腐を出した。
ワイワイ
夜なだけあり居酒屋は繁盛していて、周りは街の職人たちで賑わっていた。
ほとんどが男で、雅のような若い女性は珍しかった。
酒で気分が良くなってきたのか、銀時と桂は松下村塾で過ごした頃の話をし始めた。
皆でこっそり見たエロ本の話など。
高杉はそれを呆れて聞いていた。
(雅がいるのによくそんな話できるな。少しは気を遣えよ…)
酒を一杯飲んだ。
雅も高杉と同じ、端で飲んでいた。
あれじゃ独りで飲んでいるのと変わらない。
(話しかけてみるか…)
そして雅の左隣の空席に座ろうと、酒杯を持って席を立った。
「そういや、雅も持ってたじゃねーか。エロ本」
ブッフゥー!
高杉はつい酒を吹きこぼした。