第14章 少女よ、大志を抱け
「変な誤解を生むのは止めろ。俺はコイツの付き人になってるだけだ」
「てお前、その頬…」
高杉は雅の頬にガーゼが張ってあることに気付いた。
「これは転んだんだ。そうでしょ、桂」
「!」
雅は嘘に付き合うよう、桂に無言の協力を怖い目で求めた。
「あ、あぁ。人混みで転んでしまったのだ。俺が付いていながら情けない話だ」
「……」
高杉は別で変な違和感を覚えていた。
(血のにおいが微かにするんだが……コイツ何してたんだ?)
どっかにカチコミでも行ったのか?
屋台のおっさんに聞いたぜ。この街ァ賑やかだが裏の顔がある。
街が豊かなのは、裏でヤクザたちが回しているって。
タブーだからあまり関わるなとも言われた。
(だがヅラがずっと付いていたんなら、そんなわけねェが……)
桂はこれからのスケジュールを確認した。
銀時や高杉はそれぞれの買い出しはもう済んでおり、桂も特に用事はないとのこと。
そして雅は、
「私は明日少し野暮用がある。アンタらは先に帰ってくれ」
「おいおい。どっかに野宿するのか?」
「私を何だと思っているんだ、銀」
雅は銀時をツッコんだ。
でも、お互いそんな時期もあったなと脳裏をかすめた。
お互い、松下村塾に入る前。
恐らくその時私たちは、同じ目をしていたんだろう。
「野暮用ってなんだ?まさか男にでも会うのか?」
「…そうだな。いい男だ」
「え!」
聞いてきたのは銀時なのに、自分で驚いた。
「まさか何ィ?!戦が終わったら結婚しよう的なベタな約束したのか?」
「そんな無責任な約束はしない。それに私が会うのは子どもだ。遊びに付き合ったら、明日も約束させられてな」
桂は「言ってることはあながち間違っちゃいないが、ん~」なんて、頭を悩ませていた。
「なんだよ。ガキかよ、ハラハラしたじゃねーか」
銀時はそう言ったが、実は一番内心ハラハラしていたのは、高杉だった。
(何で俺、こんな焦ったんだ……)
「それに肝心の刀もまだ手に入れちゃいない。今回ダメならまた今度別の街にするが、明日は独りで行きたい」
「……まあ立ち話もなんだしよ、どっかメシでも食いに行くか?」
銀時は向こうの居酒屋を指名した。