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君想ふ夜桜《銀魂》

第14章 少女よ、大志を抱け



「え!アナタが…!!」

驚くのも無理はない。

雅はたったの19歳の女性で、端から見たら小柄な少女だ。

ヤクザと面と向かったほどの度胸があるのは今さっき知ったが、こんな若人が……

「驚くのは後だ。危篤となれば一分一秒無駄にできない。早くその利兵衛という息子さんのところに案内を」

「わ、分かった。こっちだ」

旦那は疑心暗鬼になりながらも、雅を病気の息子のところへ案内した。

「桂。少し付き合ってくれ」

「!」


タッタッタッタッ

雅は夫婦と娘さんに病気の子の元に案内してもらい、走っていた。

桂も雅についていった。

(雅……)

走りながらその横顔を眺めた。

「こちらです!!」

案内されたのは、藍屋だった。

旦那は藍職人で、布染めで生計を立てていた。

「藍屋か。なら清潔な布もありますか?」

「はい。うちはこの大きな街で営んでますから、常連さんもかなりいて、布はいっぱい……」

勘という女性が答えた。

「それは好都合だ。では布をありったけ持ってきてください。特に清潔で吸収性のある物を」

「は、はい!」

女性は布を取りに店の倉庫に行った。

そして旦那は雅と桂を奥の部屋へ案内した。

「コイツが私のせがれ。利兵衛です」

そこには、まだ7歳ほどの少年が苦しそうに寝ていた。

父親は息子の手を握った。

「がんばれ!安心しろ!今、お医者様が診てくれるからな」


雅は風呂敷の中身を畳の上に広げた。

「!」

メス、聴診器、消毒液、手術用手袋、麻酔薬。

全て見たことないものだらけで、桂は驚いた。

雅は少年の脈や心拍、呼吸、瞳孔などを一通り確認し、詳しい症状を分析した。

「……息子さん、「胸の奥が痛い」と仰ったことは?」

「!!。は、はい!確か2週間ほど前から訴えていました。町医者に診せたら、風邪だと薬を持たされて帰されました」

旦那は内心、雅の勘の良さに感服した。

やはりこの人は、本当に医者なのか。

「風邪なんかじゃない。心臓の血流に詰まりが生じて、酸素の運搬がうまくできていない、心筋梗塞の可能性が非常に高い」

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