第14章 少女よ、大志を抱け
ガヤガヤ
時間は3時前頃で、街中の菓子屋で子供が賑わってる風景が多く見られた。
雅と桂の間には、街の活気が入りこめないくらい暗い雰囲気が漂っていた。
「攘夷志士とは、国の反逆者呼ばわりされる輩だ。俺や銀時たちならまだしも、医者の道もあるお前が、病に苦しむ人々を救えるお前が、国にとって邪魔な存在に自らなるなんて、俺は……」
銀時と高杉は、彼女の参戦をすでに了承していた。
だが桂は、雅のこれからのことを案じて、了承しかねた。
戦によって、彼女の前途有望の未来を壊したくなかった。
「……言いたいことは分かった。アンタは女医に偏見を持たないことも」
必死になって心配してくれることも。
「だが……勘違いしてるようだから1つ教えておく。私が医術を身につけたのは、病に苦しむ“人々”を救うためじゃない」
「!」
雅は過去の記憶から、ある人物を呼び起こした。
自分より明るい青髪。澄んだ翡翠色の瞳。自分とは正反対の、太陽のように明るくあたたかい人。
世界でたった1人の母親。
「“(その)たった1人”を、救うためだった」
私が夢を持つきっかけも、その夢自体は紛れもなく自分の母親だった。
病弱な母親を救うために医者になる道を選んだ。
私の夢の全ては、母親から始まっていたのだ。
「そうだったのか…」
桂はその人物を、雅の友かそれか恋人じゃないかと思った。
誰かは気になったが聞かず、別のことを聞いた。
「その人物は…どうなったのだ…?」
「……死んだ。助けられなかった。だから私は諦めた」
雅の夢は、母親を救うことだった。
そのために彼女は、せんせーの指導の元、多くの死体を使って手術の練習をした。
何百もの死体を見て、あらゆる医療術をその頭に叩き込んだ。
だから彼女にとって、戦場に転がっている死体など、ティッシュをくるめて捨ててあるようなものだった。
「私が学んだ医術は、その人を救うという夢があることで“意味”があった。だがその人を死なせてしまったことで、“無意味”になった。“廃れた産物”だ」