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君想ふ夜桜《銀魂》

第14章 少女よ、大志を抱け



「……それは…今からマックシェイクを頼むことか?それとも…」

「4年前、お前が教えてくれたことだ。お前、本当に医者にならないのか?」


『私は医者になるつもりはないよ』


このことは、桂以外誰も知らない。同門の銀時や高杉でさえも。

雅との約束で、誰にも言ったことはない。

「……女が医者を志すのは、やっぱり変だったか」

「そういうことではない。俺はただ知りたいだけだ。なぜ断念したのか」

桂は雅が医者の道を諦めた理由を知りたかった。

あの時から、この話はなかったかのように、松下村塾で共に過ごした。

人には隠したい過去の一つや二つはある。

特に、夢を諦めてしまうくらいのトラウマとなれば、なおさらだ。

でも、戦前の今はそうはいかない。

どんなことでも、迷いがあれば必ずこの先も“心の枷”として、戦いに支障をきたす。

桂はせめて、雅が心苦しむことがあるのなら、少しでも楽にさせたいと思っていた。

「お前の言う、世間の目に耐えられなかったのか?」

「……「これ以上聞くな」と忠告したはずだが」

ギロッ

「!」

雅は鋭い目つきで桂を睨んだ。

雅の禍々しいオーラを前にすると、金縛りにあったようで声が出なくなる。

だけど、桂はどうしても伝えなければならなかった。

これからの戦のために。

そしてまた、彼女自身のために。

「俺は忘れられなかった。あの時のお前の…悲しそうな目を」

医者にならないと断言した時の彼女の表情。

何か心の迷いがあるような悲しそうな顔をしていたのだ。

つまり、固い決意ではなかったのだ。

「…見間違いじゃないのか?」

雅は誤魔化すようなセリフを吐く。

「お前に昔何があったかは知らん。だが本当は…迷っているのではないか?本当にこれでいいのかと」

雅は唇を噛んだ。

「……言ったはずだ。“廃れた産物”だと」

雅はいつもの覇気はなく、あの時のような悲しい目をしていた。

(そうだ。“その目”だ…)

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