第14章 少女よ、大志を抱け
「違うそれよりも前のことだ。あれは、戦を本格的に始める1ヶ月くらい前。つまり坂本。お前がまだいなかった時だ」
「またワシがいない時か。ちょっと残念じゃが興味があるぜよ」
銀時と辰馬と高杉が桂の話に耳を傾けながら、街中を歩いた。
桂はこの街の活気ある人達が働く風景を見ると、よくその時を思い出せた。
何故なら、去年行ったのがこの街だったから。
つまり、ここに来たのは二度目だ。
「戦前のことだったから、色々な物資を調達するための必要な外出だった。現実世界では自粛命令が出されて、今の俺達のように息抜きに遊びに行けないのは本当に心苦しいものだ」
「そうじゃのう。早く収束して、またダチ公と笑顔で遊びに行きたいのう。今が正念場ぜよ」
話が現実世界へと少し逸れていたが、銀時と高杉は敢えてそこには触れず黙って聞いた。
「……よく覚えているさ。俺は雅とその物資の調達で共に行動して、そしてその日、俺は初めて、アイツの執刀を目にした」
『!』
桂は目を閉じて思い起こした。
医者になる道を閉ざしていた雅が、人を助けたところを、俺はあの時初めて見た。
(そう、確かあれは…)
「そういえば、最近は回想やシリアスな会話ばかりで、銀魂十八番の侍の命を懸けた戦闘場面が全く出てないな、この小説は。読者の皆さーん。申し訳ないですが、また回想にお付き合いくださーい」
桂は読者を気遣ってから、回想に突入した。
回想
去年 某日
桂たちは戦を始める準備で街で買い出しをしていた。
1ヶ月後に坂本辰馬という商人が来るのだが、それまでに必要最低限のものを揃える必要があった。
刀、衣料品、医療品など。
「大きな買い物だから、今夜はどこか泊まって、明日も買い出しに行く。決して遊ぶためではないからな。宿で枕投げとかやらんからな。だがお前がそこまで言うならやらないこともないが」
「素直にやりてェって言ったらどうだ?」
高杉が桂をツッコんだ。
この時、高杉たちは16~17歳で、1年後より少年心が溢れていた。
そして雅は19歳で、誰よりも大人びていた。
この集団の中でも、全く騒がず独り能面のような表情で、1年後より近寄りがたいオーラを放っていた。