第14章 少女よ、大志を抱け
「滅多にない息抜きだから、有意義に使うことだね。私もそうするから」
雅は支度をするために自分の部屋へ戻った。
「……」
高杉はその背中を、寂しそうに見つめた。
(やっぱり、何も思ってないんだな…)
アイツ、全く表情一つも変えなかった。眉一つも動かさなかった。
(……少しだけ思っちまった。“嫉妬してくんねェのか”って)
『アンタのこと、嫌いじゃないよ』
なんて、ガキの時に言われただけで、自惚れていたかもしれねェな、俺は。
俺とアイツは、恋人でも何でもねェ。辰馬の言う通り、ただの同門だ。
俺が他の女と居おうと、アイツは止めもしない。
男の息抜きの仕方だとか必需品だとか、医者らしい都合のいい解釈して、俺のプライベートに関わろうとしない。
“アナタのことが好きだからだよ”
「!!」
昨日見た夢は全くの幻想。現実とかけ離れたただの妄想。
高杉は少し胸が痛みながら思った。
もし戦がなければ、堂々と想いを伝えて、違う道もあったのかもしれないと。
「んじゃ8時に門の前で集合じゃ。おまんも早く支度せい」
8時だョ!全員集合。
「…ああ」
高杉はその後、銀時たちと合流し街へ行った。
〈街〉
ワイワイ ガヤガヤ
かなり賑やかて活気のある街並みで、高杉たちは周りを見渡しながら人混みをあるいていた。
屋台の匂い、人々の声色、平和な空気。
戦続きでずっと血のにおいや残酷な戦場を見てきたから、こういう息抜きは銀時たちにとって必定だった。
ずっと殺しばっかりやっていたら身が持たなくなる。
人ではなくなる。
そして人を救う彼女もまた。
(雅も今頃どこにいるんだろうな…)
正直、女一人で出掛けるのは心配だ。
付き添ってやりてェ、なんて思ったが昨日あんなモン見ちまったから、堂々とする自信がねェ…
「どうした高杉?」
「!」
隣の桂が高杉に声をかけた。
「やはりお前も寝不足か。無理もない。俺と銀時が負傷して数日間、お前と辰馬に戦況を任せてしまっていたからな」
永禄山での殿戦。あれは桂と銀時にとって、かなり堪えた戦いであった。
「あ、ああ…」