第14章 少女よ、大志を抱け
「そういえば、ここに残ったとしても雅も出掛けるぞ」
「何でアイツが出てくる?アイツがどうしようとアイツの勝手だろ?」
「だっておまん、よく雅のこと過保護に思うじゃろ?だからおまんに言っておこうかと」
「俺はアイツの保護者になったつもりはねェよ。それにアイツは……保護されるタマなんかじゃねェよ」
今まで俺は、雅を何度も守ろうとした。
だけど結局、雅独りで片付けちまうことが多い。
俺はアイツに感謝されたくて助けたいんじゃねェ。
ただ、アイツはここにいる奴らを医術やら剣術やらで護ってばかりだから、少し不公平な気がするだけだ。
(……アイツは、母親を失って父親でさえも行方不明と言ってたな。しかも、母親の家は幕府の中枢。両親共に罪人扱い。そんなん色々背負っていたら、そりゃ独りで生きる力が自然と備わっちまうわけだ…)
強くならなきゃ、そんな過酷な運命とやらに耐えられなかっただろうな…
松陽先生は昔、銀時のことをこう言ってたな。
『生きるために…生き残るために、強くならざるを得なかった子です』
(我ながら思うが、やっぱりアイツらは、どことなく似てる気がするぜ…)
「そうじゃのう。雅は化粧はせず、皮で本当の顔を隠し覆っているというところか。同門のお前でも、そんなに言うくらいとなると…」
「悪かったな。化粧もしない野暮な娘で」
『!!』
雅が廊下の角をちょうど通りかかっていたところだった。
「雅?!」
高杉は雅の顔を見た途端に混濁してしまった。
昨日見た夢のこともあって、いつものように接することができず、顔を背けた。
「ち、違うぜよ。化粧しなくても本当の顔がべっぴんということは、化けるともっととんでもない美人になると…!」
「私よりも化粧していて愛嬌のある娘の方がいいだろう。その子たちに会いに行くんだろう、これから」
雅は辰馬達がこれからどこに行くのか十分知っていた。
いや、仕事柄で、辰馬達以上にそっち方面の知識は、ずっと前から備わっていた。
高杉も数日前そのことを彼女から聞いたのだが、何故か心が痛んだ。
本命に悟られることを。